佐々宝砂

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5/23/2024, 1:54:01 PM

逃れられない

逃れられないと嘆いてうずくまる人を最近よく見かける。空には今日も茶褐色の暗雲が重たげにわだかまり、科学者たちは誰一人その暗雲について説明できなかった。日照時間の低下により米は不作になり、人々は暗い顔をして過ごすようになった。でも逃れられないと言って泣き出す人を見かけるようになったのはごく最近だ。街角で、職場で、突然の天啓を受けたかのように逃れられないと叫びだす。もうそうなったらどうしようもない。ただ逃れられないといい続けるだけの人になってしまう。ああはなりたくないと思いながら歩く私の足元に茶色い泥が這い寄ってきた。そうか、そういうことだったのか。なるほどこれは逃れられない。私は逃れられないと叫んで泣く。

5/22/2024, 2:10:41 PM

また明日

また明日、と言って彼女は顔を伏せた。また明日、明日はいつくるのかと聞いたらまた明日なんだから明日来るに決まってるだろうと笑われたがここは明日が明日来るかわからない土地なのだ。みんなそれをわかって笑ってる。明日とは何か。誰もわからない。誰も知らない。明日はこの世界の自然係数も変わってしまって明日は明日の世界が来るとしか言いようがないけど、でも、わかってることや変わらないこともある。私はコーヒーが大好きだ。うちの隣のおにいさんは向こう隣の本屋のおねえさんが大好きだ。たぶん因果律がどんなに変わってもそういうことは変わらない。つまり世界が変化してもこのコーヒーは美味しいのだ。