ささほ(小説の冒頭しか書けない病

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逃れられない

逃れられないと嘆いてうずくまる人を最近よく見かける。空には今日も茶褐色の暗雲が重たげにわだかまり、科学者たちは誰一人その暗雲について説明できなかった。日照時間の低下により米は不作になり、人々は暗い顔をして過ごすようになった。でも逃れられないと言って泣き出す人を見かけるようになったのはごく最近だ。街角で、職場で、突然の天啓を受けたかのように逃れられないと叫びだす。もうそうなったらどうしようもない。ただ逃れられないといい続けるだけの人になってしまう。ああはなりたくないと思いながら歩く私の足元に茶色い泥が這い寄ってきた。そうか、そういうことだったのか。なるほどこれは逃れられない。私は逃れられないと叫んで泣く。

5/23/2024, 1:54:01 PM