「おめでとうございます!貴方は1等賞地球人に生まれ変わる権利を得ました。ささ、こちらの次元ワープトンネルへとお進みください。」1等賞で、地球人生まれ変わりの権利か…昔はプレアデス星団やアンドロメダ銀河行きが当たったのに。ここのアトラクションの質は落ちてるな…なんて思わず苦笑いしてしまった。しかし、せっかくだ、一時の夢を体験しに地球人になるのも悪くはないかもしれない。僕は自分を納得させながら、テキパキと手続きをこなす係員に目配せした。「一つだけ確認があるのだけど…僕の魂の知り合いで地球に住んでるやつはいるのかい?」
「あ、今確認致しますね…!あなた様の魂にゆかりのある生命体は現在地球にはいません。」
「そうか…まぁまっさらな状態で楽しむのもたまにはいいか。過去世に対するしがらみが全くないのは逆にスリルがあって楽しめるかもしれない。」僕は目を細めた。
トンネルの入り口は真っ暗で、先が見えない。僕は鼻歌を歌いながら、一歩踏み出した。僕とこれから出会うであろうたくさんの「貴方」を思い浮かべながら、いつのまにか走っていた。
起こさないように。慎重に、足を進める。
ソファの横を通る時、ふいに君は寝返りを打った。
心地良さそうに、僅かに微笑んで寝息をたてる。
その穏やかな呼吸は、僕を安堵させた。
生きている、君が今もなお生きて僕の側にいる。
そっと、顔にかかる髪の毛をはらう。「ん…。」
神様なんか信じてなかったのに。今、僕は世界中で唯一君の存在を独占している事実に酔いしれた。
そして同時に、怖くもなった。いつか僕の目の前から君は微笑みながら手をすり抜けていきやしないかと。
臆病な僕を笑えばいい。大切だなんて、気がつかなければこんなに苦しくなかっただろうに。
それでも、君の寝息に僕は今日も救われるのだ。
触れるか、触れないか。
そっと手を伸ばした先にある呼吸を一瞬奪うように僕はキスをした。
生まれる前から知っていたその景色は
まだ今生では出会えていない
いつか出会えるだろうか
誰にもわからない心の中の見果てぬ景色
その景色は僕の現実を歪めながら
運命と言う曖昧な言葉で魂を揺さぶる
頬を伝う涙の意味すらわからない
無知な僕は誰かの記憶を受け継いだ受け皿なのかな