月海月

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5/27/2024, 7:04:06 PM


組み敷かれて嬌声を上げる女を見下ろして
無心で行為を進めてゆけば、恍惚とした女が囁いた。

“愛しているわ”

何人からも言われたその言葉。
いつもの様にこう返す。

“キミが1番だよ”

天使の皮を被った悪魔に堕とされた女が進むその先は


#天国と地獄

5/27/2024, 10:01:45 AM


職場と家との往復で追われる毎日に、
願い事をする余裕も無ければ、やりたい事も浮かばない。

カーテンの隙間から注ぐ月明かりで浄化をする様に
疲弊仕切った身体を寝台に沈めた。

--今はただ眠らせてください…


#月に願いを

5/26/2024, 8:22:39 AM


ある所に天を衝く高さの塔がありました。
そこには墓守が1人で住んでいました。

「なァ。お天道さんよ、ちったぁ泣きすぎじゃあないかい。
塔の中の墓ごとみぃーんな持ってっちまったのに
まだ、足りやしないかい」

空がずっと泣いているので、元々あった町や村、塔の中までも
水に沈んでいたのです。

“恵の涙”と有難がっていた人達も湖や川が氾濫し始めたので
たくさん儀式を行い、贄を捧げても空が鎮まる事はありません。

それからたくさんの人達が水に飲まれたり自らを捧げる人がいて
墓守は忙しく過ごしていましたが、気付けば自分以外
誰も残っていませんでした。

「オレもそっちに行きゃあ満足するかねェ?--そうかい」



墓標となった塔が佇む世界は静かに水を湛えていました。


#降り止まない雨

5/25/2024, 5:20:36 AM

学校の帰り道。

いつも通る裏道で渡された一通の手紙。

“手紙を受け取ったなら回り道”

“目の前のモノから今すぐ逃げろ!!!!!”


僕は顔を上げず踵を返し弾かれた様に走り出した。
あの近道はもう使えない。


#あの頃の私へ

5/23/2024, 1:37:23 PM


誰かに手をとってもらいたくて
必死に必死に伸ばした腕は指先から崩れ落ち
底なし沼に沈む様に足の力が抜けていく。

「誰か助けて」と叫んだ口からタールが溢れ
いつまでも救いを求め朽ちた身体で彷徨う私は私に囚われた。


#逃げられない

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