月海月

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ある所に天を衝く高さの塔がありました。
そこには墓守が1人で住んでいました。

「なァ。お天道さんよ、ちったぁ泣きすぎじゃあないかい。
塔の中の墓ごとみぃーんな持ってっちまったのに
まだ、足りやしないかい」

空がずっと泣いているので、元々あった町や村、塔の中までも
水に沈んでいたのです。

“恵の涙”と有難がっていた人達も湖や川が氾濫し始めたので
たくさん儀式を行い、贄を捧げても空が鎮まる事はありません。

それからたくさんの人達が水に飲まれたり自らを捧げる人がいて
墓守は忙しく過ごしていましたが、気付けば自分以外
誰も残っていませんでした。

「オレもそっちに行きゃあ満足するかねェ?--そうかい」



墓標となった塔が佇む世界は静かに水を湛えていました。


#降り止まない雨

5/26/2024, 8:22:39 AM