月海月

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5/26/2024, 8:22:39 AM


ある所に天を衝く高さの塔がありました。
そこには墓守が1人で住んでいました。

「なァ。お天道さんよ、ちったぁ泣きすぎじゃあないかい。
塔の中の墓ごとみぃーんな持ってっちまったのに
まだ、足りやしないかい」

空がずっと泣いているので、元々あった町や村、塔の中までも
水に沈んでいたのです。

“恵の涙”と有難がっていた人達も湖や川が氾濫し始めたので
たくさん儀式を行い、贄を捧げても空が鎮まる事はありません。

それからたくさんの人達が水に飲まれたり自らを捧げる人がいて
墓守は忙しく過ごしていましたが、気付けば自分以外
誰も残っていませんでした。

「オレもそっちに行きゃあ満足するかねェ?--そうかい」



墓標となった塔が佇む世界は静かに水を湛えていました。


#降り止まない雨

5/25/2024, 5:20:36 AM

学校の帰り道。

いつも通る裏道で渡された一通の手紙。

“手紙を受け取ったなら回り道”

“目の前のモノから今すぐ逃げろ!!!!!”


僕は顔を上げず踵を返し弾かれた様に走り出した。
あの近道はもう使えない。


#あの頃の私へ

5/23/2024, 1:37:23 PM


誰かに手をとってもらいたくて
必死に必死に伸ばした腕は指先から崩れ落ち
底なし沼に沈む様に足の力が抜けていく。

「誰か助けて」と叫んだ口からタールが溢れ
いつまでも救いを求め朽ちた身体で彷徨う私は私に囚われた。


#逃げられない

5/22/2024, 12:40:22 PM


空が白み始めて楽しい時間も、もう終わり。

顔を出し始めた太陽に「おやすみ」と
西に霞んで行く月に「また今夜」を告げ

纏わりついた眠気ごと毛布に包まり
微睡みの底に落ちてゆく。


#また明日

5/21/2024, 2:29:39 PM


空を見上げていただけなのに。

「どうかしたの?」

なんて、おかしなことを言われたわ。

私はただ空を見上げていただけなのに。

行き交う人がジロジロ見てる。失礼しちゃうわね。

「どうかしましたか?」

何もしていないわ。放っておいてちょう、だい…。

はたと気付いて見渡せば、
みんなの瞳は真昼の月を映した硝子色。


ああ…。どうかしていたのは私の方。
みんな、“同化”してしまったのね__。


#透明

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