キラキラどころではない、ギラギラ、ジリジリ、肌が焦げるのではないかと思うくらいの太陽が、今日もますます存在感を増している。
僕は水着になるのは恥ずかしいので、Tシャツに短パンの姿で、リクライニングチェアに横になり、時々ビールを飲む。
暑いな。暑いけど、いいもんだなと思う。
こんな時間も幸せだなーと思う。
マンションの小さいベランダで、スマホから流れる波音に耳を澄ませて。
玉結びが苦手で、家庭科の授業中うまくできなくて、泣きながら家でも練習していたことを思い出す。
母は横で見ているだけで見本を見せてくれる訳でも、手伝ってくれる訳でもなく、でも、うまくできた時ニコニコ笑ってくれた。
目には見えない糸の役割があるとしたら、それは、たくさんあるだろう。
長い歴史の中で、多種多様な糸が網目のように、どんな場所にも必要なことを伝達し、繋いでくれていたのではないかと思った。
私の糸は、どんな糸なんだろう。
母が繋いでくれた優しさを、私も誰かに繋いで行きたい。
繋いで繋いで繋いで、その先に何が待っているのかわからないけど、今できることから少しずつ。
届かないのに
思いっきり手を伸ばしている
つま先で立って背伸びまでしている
1番最初に触れたいのだろう
伸ばした僕の手も止められる
でも、やっぱり届かない
諦めたのか背伸びもやめて
僕を見てニコニコしている
エントランスでの
いつもの出来事
エレベーターのボタン
いつになったら届くのかな
その時、僕も大喜びするんだろうな
記憶の地図は、たくさんある管理システムの中のひとつで、記憶を探し易くする為のものなんだ。
僕の地図は有料で4D機能を付けていて、変化を感じやすく、リアルに読めるようになっているから、かなり面白い。
そんな地図上に、5年ほどだろうか、消えてしまっている場所があるんだ。
自力で思い出そうとするんだけど、なぜか苦しくなってしまう。
でも、それでも、やっぱり気になるから、システムの復旧を依頼した。
数日して
『あなたの為に現状維持を推奨する』
と回答が届いた。
辛くて悲しい記憶など、経験値として残ればいいのであって、事柄を記す必要はないと判断する、が理由だった。
そうか。僕にとって思い出すと辛くて悲しい記憶だったんだ。
勝手に消去されるのは賛成できないけど、僕みたいな者は、管理されるのも悪くないなと思った。
きっと、いつまで経っても忘れることが、捨てることができなかったんだろう。
どうしてこの世界は、白と黒しかないのだろうか。
まだ20代の頃、赤や青など、たくさんの色があったはずなのに、今はもうどこにもない。
白と黒があれば、それで良いと思い始めたのは、いつの頃だったか思い出すこともできない。
冷たく感じる色の中で生きていることが当たり前になって、息苦しくなることもない。
こんな世界にいるのは僕だけですか。
今あなたの心からは、どんな色が見えていますか。