逆さま
夜起きて昼に寝る
夜にしか出かけない
太陽に晒されることが耐え難く
人目につくことを厭う
引きこもりになってどのくらいか
外がやけに眩しく感じる
知りたいのに感知できないし
避けたいのに迫ってくる
だいたいのことは裏目に出がち
今日だって猫のためにドアを開けようとして爪が割れた
そんなこと誰も気にしない
気にしていたら負けだ
逆張りしすぎて一周回った人みたいって言われる
逆の裏は順
つまり順張り
楽しいことを書きたいのに悲しい
自分が悲しい
自分は楽しい
悲しいことを書いていたけど楽しい
それは逆張り
順の裏は逆
人しすぎて一周回って逆張りみたいって言われる
気にしていれば勝ちだ
そんなことみんな気にする
今日だって爪を割るためにドアを開けたら猫がいた
だいたいのことは正目に出がち
迫ってくるから避ける
感知しないなら知らないし
中はやけに暗く感じる
出ずっぱりになってどのくらいか
人目につくことを好む
月夜に照らされることが耐え難く
昼にしか出かけない
昼に起きて夜寝る
逆さま
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深く考えずに書くことが多い。その方が自分の中での解釈が自由になる。新しいことを見つけていきたい。
愛情
暇な時ほど愛情を注げとどこかの誰が言ったような
暇ではないにしろ余裕がないと愛情は注げないよな
愛情がなくなる前に自分を愛せよ
夫婦
おはよう、おやすみをずっと言いあえたらいいよね。
それも押し付けなのかな、と思うけど。
好きな食べ物を食べたいのに作ってくれない。
健康を考えていて。
それも押し付けなのかな、と思うけど。
休日は出かけたい。
俺は家に居たい。
それも押し付けなのかな、と思うけど。
繁忙期でメンタルやられてるんだよね。
私もなんだよね。
それも押し付けなのかな、と思うけど。
それでもまだ一緒に居られるのが、夫婦なのかな。
行かないで
わたしにとってのあなたはかけがえのない存在で、
あなたにとってはそうではなかっただけ。
ただの独りよがり、閉店ガラガラ。
それなのに、言って何になるのか。
惨めな自分を惨めたらしめるだけ。
衣替え
年がら年中同じ服を着ていた。一々服を選ぶのも面倒だし、寒ければ一枚足して暑ければ一枚脱げばいい。そんな自分をひけらかす訳ではないが、こっそり合理的な人間だと思っているところがあった。そうだ、今は思っていない。
そろそろ同じ服35号の糸が解けてきたから285号を買い足さないとと思っていた時のことだった。寒くも暑くもなく、同じ服のベースとなる服で事足りる気温のはずなのにやたらと汗ばんでいた。カイロや温感シップを使うことはまずあり得ない。何故だ。手当たり次第、服の上から自分の体を触ってみても異常は無さそうだ。ひとまず一枚脱いだ。それでもまだ暑い。念のため熱を測るが平熱。もう一枚脱いだ。まだ汗が滲み出て冷えることを知らない。何枚も何枚も脱いだ。まだ暑い。一体どういうことだ。
やがて裸になった自分を久しぶりに鏡で見たところ、同じ服がすっかり皮膚に癒着してしまっていた。あまりにも同じ服を着すぎたのか。このままでは服を着なくても過ごせるが裸のままではバレたら大事だ。流石に頭を抱えた。
ふと、同じ服が入っている箪笥の隣、昔々に使っていた服が入っている箪笥を見つけた。ものは試しと子供用の短パンを無理やり足に通してみた。すると皮膚と同化していた同じ服がペロンと剥がれ落ちた。同じ服を着続けることは合理的でもなんでもなかったのだ。
同じ服284号を着込み283号までの同じ服をまとめて袋に入れ、ドンドンダウンに売りに行った。品は良いものだったのでそこそこの金になった。金はドンドンダウンの中で循環し同じ服が入っていた袋には春夏秋冬の服が入る結果となった。こんな出来事、越して行った友に伝えずにはいられない。一週間後、私は書き終えた手紙を投函した。
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友へ
すっかり秋の頃、いや、夏と秋を行ったり来たりしている気もするが、ともあれいかがお過ごしだろうか。こちらは衣替えをして服が癒着することもなく過ごせている。同じ服は一着だけになってしまったが、たまに眺めてはあの日々を懐かしく思うよ。君も癒着をしてしまった時は別の服を着るしかない。だから私と最後に会った時に着ていた服は絶対に捨ててはならない。いいね?
君の友より
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