あのお方がぎゅうとおれの右手を両手で包み込み「きみの手はあたたかいね」とたおやかに微笑むのを思い出す……
氷のようなあのお方の手 同じ人の子であるはずなのに、全く血の通っているとは思えない冷たい手……
冬になるとあのお方の手はよりいっそうに冷たく、真冬の冷気で冷やされた鉛のようになる……
灰のように降り積る雪の日に、あのお方が動かなくなった肉をつつきながら「わたしの手、死んだ人よりも冷たいかも」と笑うのが、とっても愛らしいと、なあお前もそう思うだろう?
お題「冬になったら」 おまねむ
夜景を見つめるおれの背後にあの方が立っている ガラス越しにあのお方の顔が良く見える 端正な、きれいな、かお……
それをウットリ見つめていると、あのお方はおれの手に自らの手を重ねて、耳元でささやいた……
「まぬけづら」、と……
お題「夜景」 おまねむ
あなたの特別はおれだけだと思っていた。「ねえねえ」と少女のような可憐な声で語りかけるのも、屈託の無い笑顔を向けられるのも、「ひみつだよ」とおれに囁く秘め事も、ぜんぶおれだけだと思っていたのに。
誰よりもずっとあなたの特別だと思っていたのに。
でも、あるとき、きづいた……。そんなわけがないだろう。
おれだけ……おれだけが? そんな訳が、なかった……。
誰よりもずっとおろかなのは、おれだった。
お題「誰よりも、ずっと」 おまねむ
あのお方がもたらす結末に、ハッピーエンド以外はありえない。
なぜなら世界の中心を辿ってみるとそこにいるのはあのお方であるから。あのお方が「面白い」と言えばそれはハッピーエンドなのだとされるから。おれが苦痛にのたうちまわっていても、あのお方が笑えばそれは幸せとされるのだ。
だがたしかに……あのお方の屈託のない笑顔を見るのは幸せだ……。
お題「ハッピーエンド」 おまねむ
あのお方の黄金の瞳に見つめられると、いやだ、恐ろしいと思う気持ちとは裏腹に、瞳からは歓喜の涙が止まらない。
そうして身を固まらせているうちに、あのお方はふいと目を逸らしてまるではじめからおれなんて存在しなかったかのように優雅に去っていく。
ねえもう一度おれを見つめてください、おねがい、なんでもあげるから。なんだってあげる、あなたの視界に入るためなら。そう願うほどにあのお方は遠のいていく。おれの存在なんて知りもしないうちに、あのお方は遠のいていく。
お題「見つめられると」 おまねむ