私は人の顔を見れない。
「なつみ!おはよ!」
「お、おはよ!!!」私は高校2年生勝野なつみ。
そして、私の友達鷲沢かんなだ。かんなとは小学校からの付き合いで、お互いのことを沢山知っている。
「なつみは相変わらず人の顔、見れないね」
かんながいつも言う言葉だ。私はこの言葉はもう聞き飽きた。
そう、たとえどんなに仲が良くても、顔が見れないのだ。
「なつみ、、あのことはもう気にしないで?」
小学校6年生の時ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私はクラスの学級長をやっていた。
私の長所は、明るくてみんなを元気にできること。他にもみんなをまとめられる力がある。それで推薦されたのだ。
「みんな!授業始まるよ!席に着いて!」私はそう声をかけてみんなが席に着いた。先生が来て、国語の授業が始まった。
「それじゃあ、なつみちゃん!この問題解いてみて?」先生に問いをかけられた。
「………」、、、、、
「なつみちゃん?」
「なつみ?どーしたんだよ!!」
「なっつん???」
みんなが私の名前を呼んでいる。
話したいのに口が動かない。声を出せない。
私はパニックになった。いきなり声が出せなくなったのだ。
私は直ぐに保健室に連れてかれて、その日は早退した。
病院に行くと、パニック障害だと診断された。特に心配入らないそうだ。1時間もすれば元に戻ると言われた。
次の日、「おはよ」とキッチンにいるお母さんに挨拶をして朝食を食べた。登校の準備をして、学校に向かった。
ガラガラガラガラ(教室のドアを開ける音)
「みんなーー!おっはよぉ!」私は勢いよく教室の扉を開いた。「…………」みんなの視線が私に集まる。
さっきまでザワザワしていた教室が一気に静まり返った。
私は、昨日のことでみんなが心配してくれているのだと思い
「あ、昨日のことなら大丈夫だよ!病院にも行ってきて、心配いらないよ!って言われたから!」私はそう発した。
「………ソワソワ」でも、さっきの盛り上がりには戻らない。
私はいきなり変な汗をかく。いつもと違うみんなが怖く感じたのだ。みんなの鋭い眼差しが私の心をくすぐる。
私はかんなの元へ机を避けながら走って行った。
「かんな、みんなどうしたの?」私はかんなに聞いた。すると
「なつみ、廊下でよ、」かんなはそう答えた。言われた通りに2人で廊下に出た。するとかんながいきなり崩れるように膝をついた。私は慌てて「かんな?!大丈夫?!」と、一緒にしゃがんだ。
「なつみ。ごめん。私、、。」かんなはいきなり泣き出してしまった。「かんな?!どうしたの?お願い。話してくれる?」
かんなが落ち着くまで待って、私は昨日あったことを話してもらった。
私はその話を聞いて呆然と座っていた。かんなは話が終わったら、また泣き出してしまった。今もないている。
「なつみ、ほんとにごめんね。守ってあげられなくて。何も言ってあげられなくて。私、なつみを守ろうとしたけど、無理だった。友達失格だよね。ほんとにごめんね。」
泣きながらずっと謝っている。私は何も頭に入ってこない。
昨日まで本当に仲が良かったクラスメイト皆が、私を批判する。今まで聞いたことの無い酷い言葉を、私が居ないところで、、、私の心に深い傷をおわせた。私は、今朝のみんなの鋭い眼差しを忘れることは無い。
高く。空高く。
「ぶぉーー」私は広くて青い空を見上げている。
青空には、白く長く続く飛行機雲が描かれた。
私は高校2年生の神崎あゆみ。17歳。
今は学校の屋上にいる。
最近、お昼休みにここに来ることが私の日課だ。
お弁当は教室でたべて、それから屋上に登ってくる。
もちろん1人で。私には「友達」という存在がないからだ。
友達のどこがいいのか。友達がいたら何が楽しいのか。私には未だに分からない。一人でいた方が楽で、好きなことが出来る。なのに何故、人は友達を作りたがるのだろう。
(キーンコーンカーンコーン)授業始まりのチャイム
チャイムがなった。だけど私は焦らない。
ゆっくりと眺めていた空から視線を落とす。その時、
目の前のフェンスに足をひっかけた鳥が羽をバタバタしている。
私はそっとフェンスに近ずき、鳥を手に取った。
鳥は、逃げようとしない。何故だろう。
私は聞いたことがある。幸せを運ぶのは白い鳥。
いま、私の手の上にいるのは白い鳥。
「もしかして、あなたは幸せを私に運んで来てくれたの?」
私は冗談で問いかけた。その時、小さな羽をパタパタと羽ばたいた。大きな青空へ、高く、高く、小さな鳥が消えていった。
1年後ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ドンッ!とお腹に大きいものが乗っかる。
「もー千咲!痛いって言ってるでしょー!!!」
「ごめんねっ!!でも、頭だよ?!」
「もー笑笑!!千咲の頭は大きいんだから!」
「何それぇー納得いかなーい」
「冗談だよ笑笑」
「あ、あゆみ?」
「ん?どーしたの?」
「私ね、あゆみに出会えて幸せだよ!ずっと大好きだからね」
今はお昼の時間。私と、、、去年であった千咲は学校の屋上で寝そべって青空を見上げている。あの日のように私は青空を見上げている。
その時、私の頬に一筋の温かい光が流れた。