僕じゃなくて見たくなくなるような現実が悪い。
今の自分はあの子の何も知らない。
笑った時のえくぼがかわいい
学校に遅刻して行った時たまたま一緒になった子。先生に怒られちゃうかもねって、振り返って揺れるポニーテールと、笑ったその笑顔が可愛くて。漫画のヒロインのようで、その日から自分はその子の事が忘れられなくなった。自分はこんなにも単純なのかと驚いた。
全然知らないのに気になるのはおかしい。
知らないから気になるのか。
とか、そんなことを考えながら
学校に向かう信号を待っていると
「今日は遅刻じゃないね。」
後ろからあの日と同じ笑顔で話しかけてきた。
たった2度目の会話なのに何故こんなに特別に思えるのだろう
「春野くんが見えたから一瞬また遅刻したかと思った。」
なんで名前を知っているんだ。
「名前知りたくて教室回っちゃった。」
自分は名前すら知らないのに、向こうから気になった?こんな事で浮かれて自分はなんて寂しい奴なんだろう。
「自分は、名前知らなくて、その、ごめん。名前教えてくれませんか?」
これが今の自分の精一杯の言葉だった。
0だと思っていた距離があの1日のおかげで今日の言葉のおかげで少しずつ進み出している。
この枯れ落ちた葉を見て春に咲く桜を思い出す人は居ない。春にだけ好きとか言って都合がいいほんとに。花が散ったらまた私の事など忘れてしまうくせに。
「外したくないなあ...」
あんなに嫌だった歯の矯正器具。
長い期間痛みと扱いの大変さに耐えてきた。矯正を始めた時、本当に嫌だった。見た目がかっこ悪いし、邪魔だし。
元々歯並びが悪いせいで笑う時口元を隠す癖があった
「かわいいね、それ。」
クラスの男子にそう言われてからその癖に気づいた。
「いいのに、矯正器具。笑うと可愛いよ?」
矯正を始めた時もその子は褒めてくれた。
矯正器具がかわいいか
あぁ、今はもう矯正器具はしていないし歯並びは治ったから隠さなくていいのに。嫌だった悪い歯並びも、矯正器具も、お気に入りになるなんて。
口を押えて笑うことは無くなった今
「すごくかわいい。君の笑顔が前から好きなんだ。」
今、隠さずに笑う笑顔も気に入ってる
君が好きな曲、君が好きな食べ物したい事、好きなアイドル、誰よりも知ってる。インスタの投稿、夜中に数分だけ乗せたストーリー、鍵垢にしたり外したり繰り返してるアカウント、誰よりも知ってるのに。
君が誰よりも好きな人にはなれない。
僕のプレイリストは全部君が好きな曲