うまみ

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今の自分はあの子の何も知らない。



笑った時のえくぼがかわいい
学校に遅刻して行った時たまたま一緒になった子。先生に怒られちゃうかもねって、振り返って揺れるポニーテールと、笑ったその笑顔が可愛くて。漫画のヒロインのようで、その日から自分はその子の事が忘れられなくなった。自分はこんなにも単純なのかと驚いた。


全然知らないのに気になるのはおかしい。
知らないから気になるのか。
とか、そんなことを考えながら
学校に向かう信号を待っていると

「今日は遅刻じゃないね。」
後ろからあの日と同じ笑顔で話しかけてきた。
たった2度目の会話なのに何故こんなに特別に思えるのだろう

「春野くんが見えたから一瞬また遅刻したかと思った。」
なんで名前を知っているんだ。

「名前知りたくて教室回っちゃった。」
自分は名前すら知らないのに、向こうから気になった?こんな事で浮かれて自分はなんて寂しい奴なんだろう。

「自分は、名前知らなくて、その、ごめん。名前教えてくれませんか?」

これが今の自分の精一杯の言葉だった。

0だと思っていた距離があの1日のおかげで今日の言葉のおかげで少しずつ進み出している。

2/21/2023, 4:55:43 PM