真っ赤なエナメル
ピンヒールは9cm
滑らかなポインテッドトゥ
優美さと強さのパンプス
そのデザインを見た瞬間
欲しい
ただただ、そう思った
そして次の瞬間
でも、、、、の言葉が
芋づる式にぞろぞろと溢れ出す
仕事には履いて行かれないし、、、
もう派手な色を好める年齢でもないし、、、
似合わないし、、、、
いつしか身についた
『それ相応』が
私を形作ってしまうようになった
好き、だけでは敵わないほどの言い訳を並べて
諦める癖をつけた
求められるべき『それ相応』からはみ出さぬように
『自分』だったら、どれが好きなんだろう
それがわからなくなるほど塗り潰される前に
私は私の感受性を守り抜く事が出来るだろうか
今でも、あの日の真っ赤なパンプスが脳裏をよぎる
お題:大事にしたい
溢れ落ちる星たちを
誰一人とめるものはなし
ただ夜空だけが
それを見ていた
溢れる星の
落ちゆく星の
その一生の
その瞬きを
お題:空が泣く
県外ナンバーの大型トラック1台だけが
静まり返った街中を走っている
誰も待っていない対向車線の赤信号と
もの寂しげに下を向く青白い電柱街灯が
煌々と光っていた
空は一層深い濃紺の果てとなり
今まさに燃え尽きようとしている
もうすぐ朝がやってくる
夜が最期の力を振り絞って役目を終えようとしている
濃紺にさらに藍を混ぜ合わせたような色彩を放ち
夜空は音もなく染み渡るように広がっていく
今日の中で1番深い色になったあと
とうとう夜は力尽きてしまった
すん、と一陣の風が吹き
その風に流されるように
濃紺はゆっくりゆっくり白んでいく
朝のお出ましだ
恋そのものが
脳回路の異常なのだから
ましてや本気など
ただのシステム不具合だ
そう言い聞かせて
終わらせた
お題/本気の恋
捨てた
日めくりカレンダーの
昨日の日付けのページみたいに
きっと今日を生きていく上で
不要になったから
明日になったら
今日さえも捨ててしまうけれど