9/10/2022, 11:45:46 AM
まだ学生だった頃
通学中にいつも聴いていた曲がある
ワンフレーズ耳にしただけで
歌詞の全てを誦じられるほど
ずっと聴いていた曲がある
自分のことを謳われているような
自分のための歌のような気がして
若さ特有の斜に構えた生意気さと
憐憫の自己陶酔
その世界観につま先からつむじまで
しっかり浸っていたあの頃
両耳にさしたイヤホンから
流れるあの曲が私を形成しているのだと信じていた
昨日久しぶりにその曲を耳にした時
随分と俯瞰的に
もう私のための歌ではないなと感じた
嫌いになったのではない
ただ、昔ほど共感もしないし陶酔も出来なかった
学生だった私が
夏の陽射しの中で風をきって自転車を漕いでゆく
私はその姿をずっと見つめていた
昔より少し不明瞭になった歌詞をききながら
曲が終わる頃
あの頃の「私」はすっかり姿が見えなくなった
もうきっと会うことはない
もう私の中にあの曲は残っていない
お題:喪失感
9/9/2022, 11:19:36 AM
流行りの店の
流行りのスイーツ
みんなこぞって向かう観光地
みんなが欲しがっていたあの品
溢れでる
誰とも知らぬ、誰もが知ってる波に押されて
みんなと同じ「オリジナル」を求め
手のひらにおさまる機器から溢れ出る
写真におさめる最中の君の横顔を
記憶におさめられるのは
世界に一つ
この場所だけ
(お題:世界に一つだけ)
9/8/2022, 12:04:44 PM
身体中の血液がぎゅっと縮こまる
一瞬の間
止まっていた血液が一気に流れ出す
指の先まで張り詰めた神経の上を
早足でなぞるように駆けて行く
じゅわっと広がる血液が
どっどっどっど
どっどっどっど
どっどっどっど
どっどっどっど
人の寿命は天命でなく
心臓の鼓動の回数で決まるらしい
ならば私に早鐘を打たせる君こそ
君こそが
9/7/2022, 12:37:57 PM
踵から爪先へ
重心を動かすように
自らの身体を動かす
重い重い休み明け
羽の軽さの休み前