子供の頃の夢



サッカー選手になりたかった

たまにパイロットになりたかった時もあったけど

期間としてはサッカー選手が1番長かったと思う

とはいえ、毎日必死にボールを蹴っていたわけでも

テレビに齧り付いて試合を観ていたわけでもない

子供の夢ってそんなものだと思う

それくらい自由でいい

だからそっと見守って

雨の香り、涙の跡


またね、元気でね

祖父の棺の前でつぶやく言葉として

正解だとは思わないけど、自然とこぼれた

まだしばらくはここで見守ってくれているはず

雨の香りはもうしない

涙の跡があるだけ

糸



深淵の中の現れた一筋の光

絶えず聞こえてくる呻き声がピタリと止んだ

そっと周囲を見渡すといつもと変わらぬ地獄

自分だけが特別なのだ

希望を胸いっぱいに手を伸ばす

彼はまだ知らない

それは救済ではなく試練の始まり

届かないのに



周りを見ながら手を伸ばす

欲しくもないけどみんなから浮かないように


つま先立ちになったら、ジャンプしたら

届くのかもしれない

でも届いてしまったら面倒だから手を伸ばすフリだけ


早く会ってみたいな

心から手を伸ばしても届かないものに

記憶の地図



10年ぶりの帰ってきたこの街

この道をまっすぐ行くと両親とよく行ったスーパー

、、、は無い

ここを曲がると部活帰りにみんなでおしゃべりしたカフェ

、、、も無い

10年も経てばみんな変わってしまうか

ふと目を上げると、当時と変わらない

あなたと初めて会った場所が輝いて見えた