この場所で
あの場所で起きた事件をみなは口を揃えてこういう。
「そんな事件、あったんだ」
私にとっては凶悪な事件だった、なのに他の人からはただの他人事にすぎない。
みな自分が体験しなければ何もわからないのだ。
なのに分かったような口を聞く警察に両親。
この場所で起きた事件がまた繰り返されるのだ。
誰もがみんな
誰もが醜い悪魔、いや怪物になれる。
私は、初めての怪物を見たのは8歳の頃だった。
いつもは優しく微笑んで何もかもを許してくれる女神のような母が怪物になってしまった、いや、「私が怪物にしてしまったのだろう」
私がいじめられて学校に行きたくない、と言って私の為に尽くした母が疲れ切ってしまい勝手に外に出て花束を買ったことにイライラし私の頬を叩いた、その時から、もう、手遅れだった。
母は、とうの昔に怪物になっていたのだ。
花束
過去の記憶を思い出す。
死んだ母との最後の記憶を。
「ちょっと、いや、あの、ね?これ、母の日🌹」
外の景色。
きらきらしてた。
母にそう話すと…
「は?。あんたがもう、なにもかもが嫌なのって言ったからさ、尽くしたのに、勝手なことしないでよ…本当にさいい加減にして‼︎」
バシっっ!!
頬に痛みが走った。
「いっ…‼︎」
「もう…いい加減にしてよ…」
疲れ切った母の声は掠れていた。
いじめを受けて、休みたい、もう行きたくない、そう言ったのは私。
だけど、だけどさ、言えないこともあるんだよ。
「お母さん、やめて…」
すると北海道に出張に行った父が1年ぶりに帰ってきたのだ。
「お、お父さん?」
「あかね、どうしたんだ!頬にアザが…」
「あなた、やめて…とめないで!悪いのはこの子なの、もういやなの」
人の気持ちはわからない物だけど、私はただ、花束をあげたかっただけなのに。
これが疲れ切った人間というなの怪物の姿だった。
スマイル
笑えない冗談。
笑えない出来事を思い出す。
笑えよ、何も分かっていないのに話しかけないで、私の事を理解してほしかっただけなのに。
どうしてこんな辛い思いをしなければいけないの?
母が死んで、それなのに笑えって、ムリだよ。
お前らにはわからないよね。
もう耐えがたい出来事から、逃げたくなったから。
ほら、笑ったよ。
スマイルを浮かべる人達と、笑うことしかできない私達。