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10/28/2023, 4:24:12 AM

「紅茶の香り」


お母さんは何飲むのー?

休日のお昼時に聞こえてきたのは親子の何気ない会話
ドリンクバーのコーナーの前で悩む母親をよそに、
何種類もあるティーパックを見て、子供はこれは?これは?と質問責めにしていた。
そんな光景を見てふと自分の幼き日を思い出す。

学校が休みの日は家で母と2人お菓子を作ってはお茶会ごっこをしていた。
クッキーやスコーン、たまに和菓子と色々作った物だ。
そして、必ずセットで紅茶が出てきたのだ。
裕福とは言えなかったけど、手作りお菓子と紅茶のお茶会がとても楽しみだった。
そんなある日、母はティーパックじゃない、いつもとは違う紅茶を出してきたことがあった。
私は興味津々で紅茶が入るまでの過程を眺めていた。
コポコポとティーポットにお湯を注ぎ、茶葉を蒸らす。
カップに入れる時にほのかに香るオレンジの香り
初めて安物ではない紅茶の香りを嗅ぎ、期待を膨らませ、いざ一口ごくんと飲んだ。

あれ?あまくない
口いっぱいに広がる香りと味は別物であり、私は明らかにしょんぼりとした様子だったのだろう。
その様子を見ていた母は微笑み、私に、にんじんのパウンドケーキを差し出し、一緒に食べたら美味しいよと笑った。
それに釣られ私も笑い、いつもより少しだけ特別なお茶会になったような気がした。

そんなことを思い出しながら母にメールを送りスマホを置き、先ほどの親子に視線を戻した。
するとすぐに返信が来て、週末は久々にお茶会をすることになりそうだ。

10/27/2023, 5:46:35 AM

『愛言葉』


秘密の質問の答えは…
ロックがかかった彼女のパソコンの画面と睨めっこして早2時間

突然別れが来ると思わずなんの用意もしてないしされてないこの部屋で、1人ポツンと生前彼女が使っていた物達から何かヒントは無いかと一瞥するもあるのは私との思い出ばかり。

私の寝顔の写真まであるとは…こんな写真まで飾ってと少し恥ずかしいけど、愛されていたんだなと嬉しさが込み上げるのと同時にこの手で抱きしめることも会うことも出来ない寂しさでいっぱいになった。

なんで置いてけぼりにしたんだよ、あの日ずっと帰ってくるの待ってたんだからな…

行き場のないこのつぶやき、これからどうしたらいいんだろうなと彼女のお気に入りだったぬいぐるみを抱きしめていると
もしかしたら、と1つ合言葉が思い浮かんだ

まさかなと思い試しに入れたらやはりビンゴ

合言葉を愛言葉にするとは、なんとも彼女らしい
どんだけ私のこと愛してるのよ…
ぽつりと画面に向かって突っ込んでしまった。