あの日、共に生きる未来を語った君はどこにいるのだろうか。
「私ね、彼氏できた。」
親友から突然発された言葉で私の周りの時間が止まる。
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「大学卒業したらさ、一緒に住もうよ。」
「マンション借りてさ、家具の系統も揃えよう。」
無邪気に話す君。
人の気も知らないで…と内心苦笑いしながらも、共にその輝く未来に思いを馳せた。
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はっきりとは言葉にしなかったけれど、心のどこかで君も私と同じ気持ちだと思ってた。
でも、そっか。そうだよね。
私が男だったら…なんて叶うはずもない妄想をしては胸が締め付けられ、それでもまた願う。
私の中で途方もないほどの時間が流れたあと、精一杯の笑顔で言った。
「…よかったじゃん!幸せになってね。」
「…ばか」
君を見送ったあと、泣きたくなるような清々しい青空に向かってそっと呟く。
君の未来がこの空のように晴れやかでありますように
『遠くの空へ』
出会ったのはいつだっけ…
窓際の席に座る君はいつも1人で、何を考えているのかよく分からない。
それでも、ふとした時に見せる笑顔とさりげなく手を差し伸べてくれる優しさがあたたかくて…君に惹かれるのに時間はかからなかった。
内気な私はアプローチなんてできなくて、陰から君を見つめる日々だった。
「あ、今あくびした。昨日よく寝てないのかな。」
「そのシャーペン見たことないやつだ。」
「いつも同じお茶飲んでる。私も飲んでみよう。」「弟いるんだ。私と一緒。」「家は学校から近い、青い屋根の家…」「アカウントは2つ。1つは学校用、もうひとつは趣味用。」「寝る時間は…」
気持ちは伝えられないままだったけど、君を観察して少しずつ知っていく…そんな毎日が、君に近づいているような気がしてどうしようもなく愛おしかった。
そんななか、ふと耳にした『彼がストーカー被害に遭っている』という噂。
その人は、彼が誰にも教えていないことまで知ってるんだって。
許せない。私の彼なのに。私だけの彼なのに。
私が彼を守らなきゃ。
その日から一層君の近くにいるようになった。
他の虫が寄り付かないように。
日課である君の尾行をしていたある日、突然誰かに腕を掴まれた。
掴まれた方を見ると、なんと追いかけていたはずの君だった。
「「なんで君が…」」
同時に発した。
ストーカーを捕まえようと思って…と誤解を解こうとすると、君は見たこともない形相で「気持ち悪いんだよ、ストーカー女」と冷たく言った。
頭が追いつかない。
どうして?私じゃない。そんなのと一緒にしないで。私が守ってるんだよ。だってこれから1人で図書館に行くんでしょ?1人でいたら危ないじゃない。
頭の中でぐるぐると回る言葉は1つとして口に出なくて。
焦れったい。悔しい。悲しい。
それでも
「私は君が……」
『言葉にできない』