人によって大切なものの対象は変わる。
・家族
・恋人
・友達
・推し
・ペット
・お金
・命
などと様々だ。
ボクの大切な宝物は心臓だ。命とはまた違う。心臓という臓器そのものが宝物なのだ。
ボクは小さい頃から心臓が弱く、臓器移植が必要だった。そんなボクに心臓をくれたのは亡くなったお父さんだった。もう声も思い出すことは出来ないけれど、いつまでもボクはお父さんに大切にされていて、ボク自身もお父さんが大切な宝物だ。
#宝物
「と言って老人は闇に紛れるように姿を消したのでした。」
ふーっと息を吹いてろうそくの火を消す。
これで九十九話目。昔から仲のいい友人と五人で百物語をしていた。ろうそくも残り一つ、次の話で最後だ。
昨日の夕暮れ時から長い時間怖い話をしていたので、他のみんなは眠っている。
ワタシもなんだか眠くなってきた。
最後に楽しく心中出来て良かった。
#キャンドル
ボクはふと昔のことを想い出していた。
初恋の子と泥だらけになって遊んだこと。
両親に初めて遊園地に連れて行って貰った時のこと。
数年前に亡くなったおばあちゃんと遊んだこと。
好きなアーティストのライブに行ったこと。
最近の悩みなど忘れてしまうほどに楽しかった時の想い出を想い出していた。
お母さん、お父さんごめんなさい。
神様に縋ってもダメでした。
ボクはもうすぐおばあちゃんのところへ行きます。
親不孝者でごめんなさい。
そうしてボクは地面に叩きつけられた。
#たくさんの想い出
電車のホームでの事だった。
誰かに背中を押されボクは迫り来る電車の目の前に落下した。
#はなればなれ
秋ってなんだろう。最後に秋と逢ったのは去年のことなのでもう忘れてしまった。今年も秋に会えるのを楽しみにしていたのに今年は秋と逢うことが出来ないことにボクは心が沈んでいた。
そんな時頬に冷たい風が当たった。
秋の風はもう少し暖かかったなと思い出し、ボクは白い息を吐き出した。
#秋風