泣かないよ
じゃあ写真撮るよー
はいはいこっち向いてー
あーもう香織ちゃん泣かないの、こっち見てー
撮るよーはい、チーズ!
『桜が咲かない卒業式に
目を赤くした君に
大丈夫だよを言ってあげたい』
あっここにいたんだ、渡したいものって?
香織に似合うと思って、はい卒業おめでとう
えっなになに、開けてもいい?
もちろん
わっ!ネックレスだ!光ってるみたい、ありがとう!
君の手の中で青く輝く光は君が泣きたい時に一緒に泣いてくれるかなと思ったんだ、なんてキザなこと言えないけど
遠くに行くことは最後まで内緒にした
『梅が咲いた卒業式に
赤いネックレスを握った私に
大丈夫だよを言ってあげたい』
怖がり
「前だけ向いてれば怖くないよ、大丈夫だよ
あぁもう下見ちゃだめ、ほらきれーな青空だね
大丈夫、だいじょーぶだからね
前だけ向いてて、ね」
後ろに、下に、上に、何があったのだろう。
何がいたのだろう。
きっと知らなくていい事だ、
前だけ、前だけ、まえだけ、まえだけ、まえだけ、まえ、だけ、まえだ
け
おねーちゃん
ずっとこのまま
遠い席に座る君を見てるとき
一緒の電車で見つけたとき
思ったより声が低いなと思ったとき
君の笑顔が見れたとき
バレーに一生懸命な君を見たとき
昼ご飯食べてる時ふと見えた、口を大きく開けて笑う顔をみたとき
怒られたあとしゅんとしてる君を見たとき
雨の日ぎこちない笑顔を見せる君を見たとき
君の、とびっきりの笑顔を見たとき
寒さが身に染みて
ある日の春、あなたの笑顔をもらった
ある日の夏、パピコを半分もらった
ある日の秋、おいしいお菓子をもらった
ある日の冬、手袋をもらった
ある日の春、誕生日にネックレスをもらった
ある日の夏、海をもらった
ある日の秋、おそろいのマグカップをもらった
ある日の冬、マフラーをもらった
ある日、手を繋いでくれた
やっと寒くないような気がした
20歳
もう死んでやる!と言った彼女は青色の振袖
俺将来有望だし、お前らなんかより金持ちになるからと言った彼は無駄に派手な袴
私たち結婚するんだと言った2人は来なかった
人生そんなもんなんだなと若いながらに悟った
学生時代の悩みなんてないように過ごす20歳たちの背中を見て
脳内で大きな切り傷を付ける妄想をする
台無しになってしまえと思った
思って、しまった