幸せに
ある日前触れもなく、学校に行けなくなった
教室に入ろうと扉に手をかけた時、普段聞こえない心臓の音がバクバク聞こえてきた。おかしいとは思ったが、前にもあったことだった。今回も大丈夫だろうと教室に1歩歩みを進める、と
体
が
傾
く
気づけばそこは保健室で起きて早々、親御さん来ているから今日は帰りなさい、と担任に言われてしまった。
次の日もその次の日も、1週間たっても、1ヶ月たっても
学校へは行けなかった。
おかしいと思った。ぼくの体はこんなに弱くなってしまったのか。いつしか太陽の光や家族さえも拒絶するようになった。
自分のことが理解できなかった。普通に学校に行けるはずだったのに。なぜか動けなかった、動かなかった。
本来できるはずだった友達も、恋人も、親友も、先輩も、後輩も。全て、無くしてしまった。
ある日インターネットサーフィンをしていたら、
親のスネかじって生きてます、というタイトルの動画を見つけた。
そこには、床が見えないほどのゴミやペットボトル、コンビニの袋。ベッドの上でさえ物で溢れかえっていた。
部屋の電気は消され、パソコンから放たれる光だけが照らしている。
そして縦より横の面積の方が多そうな体型の男が出てきた。髪は油でギトギトになっており、清潔感とは程遠い。
なにやらボソボソしゃべっているが、音量を上げてもほとんど聞こえない。
あぁ、自分より不幸な人がいる。
自分はまだ不幸せなんかじゃない、むしろマシな方だと思うことができた。
それはぼくの人生、最大の喜びであった。
ハッピーエンド
幼少期、おかしを買ってもらえなくてスーパーの地面に座り込んだら買ってくれた
小学生、みんながゲーム持ってるのに自分だけ持ってなくてずっと不機嫌でいたら買ってくれた
中学生、成績が下の下だったので公立高校に受からなかったが、お前のせいだと言われて勉強教えてくんないのが悪いじゃんと言い返すと黙り込んだ両親
高校生、県内学力ワーストの学校へ進学したものの、勉強についていけず煙草や酒に手を出す
大学生、指定校推薦でなんとか入ったが相変わらず頭は良くなく酒、女、煙草、バイクに明け暮れる日々
大学中退後、就職活動をせずだらだら過ごす酒、女、煙草に浸かる
40代、両親が死んでからは生活保護で生きつなぐが、友人は縁が切れ年齢を重ねるごとに女は離れていったため、酒、煙草、バイクが唯一の趣味になる
酒や煙草が祟ったのだろう横腹が痛くなるようになった
何かしらのガンだろうか
暗い部屋で生涯を終える
俺の人生はこんなもんじゃない、まだやり残したことが……
あったっけ?
楽をし、ズルをし、苦しいことをひたすらにやらなかった人生。
これは最悪なんかじゃない。むしろ、むしろ、最高だ
見つめられると
同じクラスのいつも教室の端でいちゃついてるやつ
でしかなかった印象が変わったのは
君の目を見てから
吸い込まれそうなラテの色 日本人とは思えないほど透き通ったその瞳に一目惚れした
いつもマスクをして顔を隠しているから、どうしてもそこから視線が外せない ガラス玉のように光を吸収してその分輝きを放っているように感じた
何も言わずその目を見つめる時間が好きだった
不思議そうにされるが笑ってみれば笑い返してくれるから
ずるいものだ
恋とも愛とも見分けのつかない そうする必要もない
君の瞳に、
ないものねだり
ベランダで煙草を吸った日。後ろから抱きしめられた日。
そのまま2人でただれた日。
ベタな恋愛映画を見た日。隣に座る君が泣いていた日。
そのままキスをした日。
観覧車に乗った日。いつもの顔で愛を伝えてくれた日。
私もだよ、と伝えた日。
ステージの上で踊った日。観客席に君を見つけた日。
少しだけ目を細めた日。
端っこの席に座った日。君に話しかけた日。
きれいな瞳をしていると気づいた日。
端っこの席に座った日。大きなあくびをした君を見た日。
ほんの少しだけ笑ってしまった日。
もう絶対に戻れない日。
あなたの泣き顔を見た、日
特別な存在
部活終わりコンビニに行く。それ自体はなにも特別なことはないが、いつもはいない君がいた。
君はいつもあの男と帰るからいないと思ってたのに。
くだんない話をして、恋バナで頬を赤らめる君を見て
好きだと、思った。
偶然2人きりで帰ることがあって。君があの男のことが好きではないと知った。てっきり相思相愛だから一緒にいるものだと思っていた。
空が静寂を表すような日に、駅で告白した。
君はわたしは人のこと好きになれないと思うと言った上で、それでもいいならとしばらく悩んだあとつぶやいた。
その日の夜は、久しぶりに泣かなかった。
それから君は確実に距離を作った。LINEに返信するのは2日後、部活中も目を合わせず、あの男と一緒に帰っていた。
君と僕はほどなくして別れた。
別れてからの君は清々しい顔をしていた。僕の目の下のくまとは対象的で、君の顔を見たくなかった。
突然君は部活を辞めた。
辞めたがってたのは知っていたからあまりショックは受けなかった。あの男と、同じ楽器の先輩だけが泣いていた。
それから君はたまに連絡をしてくるようになった。付き合っていたときの対応とは真逆だった。でもまだ君が僕のことを覚えていてくれているのが嬉しくて、連絡を続けた。
君はまだ僕の特別だ。