地平線の向こうから亀裂が走り、太陽が昇る。それを合図に、麓の街より澄み切った鐘の音が響き渡る。
「……エディア」
夜風に混じって、ヴァスクの声が聞こえる。白銀の髪は雪を纏ったが、色の移ろいを感じさせている。
「新年を迎え、それをお前と分かち合えること。ありきたりな言葉ではあるが、喜ばしいことだ」
彼は薄く微笑む。口の端はほころび、目尻が下がっている。格好良くもあるが、それ以上に美しい。憂いを帯びた表情が印象深いが、柔らかな笑みも魅力的で。
「ん……そう、触れられると」
無意識に伸ばしていた手、その指先は彼の目元をなぞっていた。彫り深く、端正な顔立ち。年相応の落ち着き払った姿を、この手で描くことができたなら。
「お前の手は小さいな。手入れを怠らないのも、好ましい」
そのまま抱き寄せられる。厚い胸板に、太く硬い指。何もかもが自分とは違う。
「エディア。俺はお前の描く絵も、筆を握るその姿も……お前の全てが好きだ。どうか私の傍を離れないでくれ」
『この腕に全てを収めて』
お題
新年
今年の抱負
今年は思うようにいかないこともたくさんありましたが、来年も頑張りたい。
長いのを完成させたい。
というわけで、私の作品を読んでいただきありがとうございます。来年もマイペースにやりますので、どうぞよろしく。
良いお年を!
2024/12/31
一人で過ごす夜は寂しいものだ。
同じ時間を過ごす喜びを知ってしまえば、なおさら。
見慣れた面影を追いかけるように、今日も夜市を歩く。
『魔女は騎士の影を追う』
お題
「寂しさ」
パチパチと薪の爆ぜる音がする。
降り注ぐ雨の音は夜と共に去り、雪に変わっていた。
窓の外を眺めていたら、後ろから抱きしめられた。差し出されホットワインを飲むと、甘くてスパイシーな味がした。口数こそ少ないが、一緒にいて心地が良い。
窓に映る彼はいつもより柔らかな笑みを浮かべていた。
「この熱を君にも」
冬は一緒に
苦しく重くなる意識の中で、貴方の手の感触がずっと残っている。
お題
風邪