愛情と憎悪は表裏一体でありながら究極の同位体。しかし、愛憎の対になるのは無関心。
魔女にとって、彼らは確かに仲間だった。色欲に溺れ、怠惰な生活を送る彼らを諌めたが、彼らの罪を全て押し付けられてしまった。騎士が彼女を救い出したが、壊れた心は戻らない。
助けを乞う言葉も、下される判決も、魔女はぼんやりと聞いていた。 彼らの転落やその末路はどうだっていい。自分を大事にしてくれる騎士がいるのだから。
裏返し
閉館後の片付け作業。来館者は皆帰ったはずなのに、足音が聞こえる。少し目を離していた間に、出しっぱなしの椅子も、机の上にあった本も元に戻されていた。
いたずら好きな精霊かと考えつつ、出入り口を施錠しに向かう。そんな彼女の背後に、長い影が覆いかぶさった。
「夜隅の狩人」
鳥のように
「ドクター、貴女を愛しているんだ」
彼は確かにそう言った。しかし、先程から勢いは衰えず、フードまで外される始末だ。
「待って、将軍……それ以上は」
さよならを言う前に
自分の顔や肌を隠すのが習慣になって、いつしか晒すことが恐怖に変わっていた。信頼できる相手にもそれは変わらず、誰も私の顔は知らないまま。
テラを離れた今もそれは変わらない。刀剣男士はともかく、審神者たる者は黒や茶色の控えめな色目の髪や瞳が多い。
それもあって、変わらず隠していた。
誰にも見せることなんてもうないと、思っていたはずだったのに。
「主、ちっくと聞きたいことが……」
髪の毛を乾かしていた時、背後から声をかけられた。鏡越しに目が合って、何も考えずに振り返った。
「おお!おまさん、綺麗な顔立ちをしちゅーやいか」
心臓が止まるような感触がした。
「鏡」
「まさか本当に“天使”になるなんて、誰が思うんだよ」
その棺の蓋が固く閉ざされ、花一つ添えることも叶わず。男はただ静かに送り出すことしかできなかった。
持ち主を失った麦わら帽子は燃やされることなく、助手席に在り続ける。