百瀬

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6/2/2024, 9:47:31 AM

「君の思うままに演奏するといい」
教授は鍵盤に指を置き、最初の一小節を弾き始める。少女も弓を構え、追うように弦を爪弾く。
軽やかな旋律は徐々に盛り上がりを見せ、ついに彼女が動く。ヴァイオリンが踊り出て、優雅に主旋律を勤め上げる。伴奏に徹するピアノも、繊細さを増して寄り添い続ける。

Title「季節外れのキャロル」
Theme「梅雨」

5/27/2024, 9:22:37 AM

「子供たちにどう埋め合わせをすべきか」
彼女なら妙案を出してくれるが、起こすのも忍びない。静かな寝息と、耳元の羽が擽ったくも心地良い。滑らかな髪を梳いて見れば、絡まることなく指をすり抜ける。
車窓から望む月は煌々と輝いている。今宵の天体観測は皆で願い事をする予定だったが、私は──

Title「昇華」
Theme「月に願いを」

5/26/2024, 9:59:32 AM

鞄と灯を濡れないように覆い、息を潜めるようにして歩き続けていた。僅かに残った感覚を頼りに足を進めていたが、それも長くは続かない。目眩もしてきて、少し先の景色もはっきり見えていない。
近くの壁にもたれかかると、足音が聞こえてくる。逃げなければ、という気持ちはあれど足は動かない。

Title「邂逅」
Theme「降り止まない雨」

5/24/2024, 10:03:09 AM

轟々と燃える戦火をかき消すこと、この大地から離れること。それはどちらも叶わない話だ。勝者として相手を圧倒することができればそれが一番いい。だが、力なき者を守るためならば、背を向けることも厭わない。私はそうして生き延びてきた。肩を並べた友は一人残らず旅立ったが、私はまだここにいる。

Title「錆びぬ理想」
Theme「逃れられない」

5/23/2024, 1:17:30 AM

主はここ最近とある男性にお熱らしい。長くはないが、週に何度か電話しているところを見かける。
「ありがとう……明日は、大丈夫」
主が笑った?これは一大事だ!
「うん、吠えたみたいで……良い子だけどね」
好奇心が喉から出て来てしまった。あぁ、いつかその顔を拝ませてもらおうではないか!

Title「飼い主の春」
Theme「また明日」

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