【モンシロチョウ】
子どもの頃、春になるとモンシロチョウが飛び交う当たり前の風景の中にいた。あの頃、モンシロチョウはどこからきてどんな風に成長してチョウになるのかなんて考えたこともなかった。そのくらい当たり前の風景だった。
そもそも春に卵を産むモンシロチョウはどこからくるの?
キャベツしか食べないの?
昔から存在するならキャベツが出てくる前は何を食べていたの?
中年になった今、まるで子どものような疑問が浮かんでは消える。きっと今ならネットで調べればすぐ分かることかもしれない。でも、調べないでおこう。不思議だな、と思う気持ちが対象物に対して畏敬の念を抱くなら。モンシロチョウ、摩訶不思議なり。
flamme jumelle
【忘れられない、いつまでも】
少年は発熱し、街のキャンプから早退していた。夕方、母親が帰ってくる。「全く恥ずかしい」
予想外の言葉と表情。少年の心は次第に閉ざされていく。
少年は青年になり、結婚して子どもが生まれた。不器用ながらもなんとか協力しようと子育てに奮闘。
「ほんと、つかえない」
妻の一言。そしてその言葉に同調する義母。嘲笑う表情。青年の心は瞬間、閉ざされていく。
人間の悍ましさ。青年はさらに歳を重ね,中年になる。人間の繰り出す醜い社会。人間という生き物にほとほと嫌気がさす。かくいう本人が人間であることすら嫌気がさしていた。
しかし、今、その中年に光が差している。暑くもなく眩しすぎもなく、とても心地よい。中年の心が次第に開かれる。今もなお。
忘れられない過去の忌々しい記憶。それを打ち消すような忘れたくない今の記憶。中年は今、人間であることを少しずつ受け止めようとしている。
flamme jumelle
一年後、僕は元気に生きているだろうか。
一年後、僕はボールを追いかけているだろうか。
一年後、僕は登っているだろうか。
一年後、僕は釣り糸を垂らしているだろうか。
一年後、僕は走り続けているだろうか。
一年後、僕は仲間と楽しくしているだろうか。
一年後、僕は仕事を楽しんでいるだろうか。
一年後、僕の隣に大切な人は変わらずいるだろうか。
一年後、期待と不安が入り混じる。期待?いやむしろ現状を維持することが精一杯かもしれない。それでも、一年後を考えるならば、まず明日を精一杯生きること。明日精一杯生きたなら、明後日を精一杯生きること。その積み重ねが一年後。
一年後、僕はどうこの一年を振り返っているのだろうか…。
flamme jumelle