【忘れられない、いつまでも】
少年は発熱し、街のキャンプから早退していた。夕方、母親が帰ってくる。「全く恥ずかしい」
予想外の言葉と表情。少年の心は次第に閉ざされていく。
少年は青年になり、結婚して子どもが生まれた。不器用ながらもなんとか協力しようと子育てに奮闘。
「ほんと、つかえない」
妻の一言。そしてその言葉に同調する義母。嘲笑う表情。青年の心は瞬間、閉ざされていく。
人間の悍ましさ。青年はさらに歳を重ね,中年になる。人間の繰り出す醜い社会。人間という生き物にほとほと嫌気がさす。かくいう本人が人間であることすら嫌気がさしていた。
しかし、今、その中年に光が差している。暑くもなく眩しすぎもなく、とても心地よい。中年の心が次第に開かれる。今もなお。
忘れられない過去の忌々しい記憶。それを打ち消すような忘れたくない今の記憶。中年は今、人間であることを少しずつ受け止めようとしている。
flamme jumelle
5/9/2024, 1:52:49 PM