『今日の心模様は晴れ時々曇り、ところにより強い雨または雷雨となりそうです。午後からは時折雪やみぞれ一部の地域ではあられが降るでしょう』
……たぶんそんな人はさすがにいないと思うが、もしかしたらいるかもしれない。
まあそれはさておき、心模様が雪やあられやみぞれとはいったい何だろうか。
痛い心? もうどうにでもなーれという状況?
それなら雨、豪雨、雷雨で充分通じる気もする。
というより心模様は晴れ、曇り、雨のどれかしか見たことがないように思える。
やはりオールシーズンに観測でき、なおかつ読み手が想像しやすいという利点があるからだろうか?
うーむ、謎だ。
絶対にあいつだけは許さない。
あいつは俺の恋人を殺したにも関わらず、薄っぺらい反省と謝罪で罪を軽くして、のうのうと社会に出てきている。
そんなこと許されるはずがない。
罪はちゃんと償われるべきだ。あんな奴が心の底から反省しているなんてありえない。
だから俺は決心した。法に代わり俺が裁いてやる。
こういう時、自称善人は言うだろう。
「恋人はそんなことを望んでない」とか「復讐は何も生まない」などと。
確かに彼女も俺が手を汚すことを望んでいないだろうが、俺の気が済まない。
何より、あいつが生きているという事実に耐えられない。
倫理的にはたとえ間違いだったとしても、俺はやり遂げてやる。
独りよがりな歪んだ正義と言われても、これが俺の正義なのだから。
雨の雫、葉っぱから落ちる雫。
……といえば思い起こされるのはあの形だが、それはいつからあの形だと理解されるようになったのだろう。
昭和? 大正? 明治? 江戸? それよりも前?
ギリ肉眼でも見えそうだが、落ちるスピードが早いので何度も何度も実験観察しないと難しそうだ。
しかもその時代に雫をじぃっと見ていたら間違いなく変人扱いされるだろう。
というかお金にも身のためにもならないことを周りがあたたかく見守るはずもない。
……やはりカメラや映像技術が向上してきた現代、もしくは昭和の後期とかなのだろうか。
だとすると雨の雫があの形と世間に広まったのは最近なのだな。
……平安時代や縄文時代から理解されていたらどうしよう。
……どうもしないか。
お腹が空いてないかって? いいえ、大丈夫ですよ。
痩せ我慢するなって? 我慢なんてしてませんよ。
食べたそうな目をしてるって? ……そりゃああなたが美味しそうに食べてますからね。
あのですね……私は何もいらないのですよ。
そんなこと言わずに一口あげるだなんて、それもいりません。
でもお腹が鳴ってるって? そりゃあこんな悪魔的な良い匂い、お腹が空くに決まってますよ。
でも食べませんよ。そんなニンニクマシマシとんこつラーメンをこんな時間に。
それに明日も仕事なのですから。
俺の姉は占いにハマっている。
血液型占いから始まり、動物、水晶玉、数秘術……などを経由し今はタロット占いに落ち着いている。
解説本とにらめっこしてやり方を模索している姉に俺はずっと疑問に思っていたことを訊いてみた。
「姉ちゃん。なんで占いにそこまでの情熱を注げられるの?」
姉は顔を上げてさも当然かのように答える。
「なんでってそりゃあ、当たるわけないからよ」
予想しなかった言葉に思わず俺の目が点になる。
それに気づいているのか気づいてないのか姉は言葉を続ける。
「占いなんてね、テキトーなの。当たるわけないの。
でもそのテキトーが大当たりする時があるでしょ?
だからみんな勘違いするのよ。
あたしがそれを証明するんだから」
「……つまり?」
「察しが悪いわねー。
あたしがエセ占い師になって占いに縋るとロクな事にならないって身をもって体験させるのよ!
これまで何人か友達の紹介とかで占ったことがあるけどさ、テキトー言ってんのにほぼほぼ感謝されて……
だからあたしに適性がない占いを探してんのよ」
胸を張り、ドヤ顔をする姉に何も言えないでいると姉はズイッと鼻息が顔にかかるくらい俺に近づく。
「占いとかでもしも未来を見れるなら世界中の誰しもが占い師になるわよね? でもそんな流れはないでしょう?
だから占いなんてテキトーだってあたしから発信するしかないのよ。わかった?」
「……うん」
「じゃ、そういうことだから」
再び解説本とにらめっこを始める姉。
……なんでエセになりたいのに勉強するのかとか占い師の適性ありまくりなんじゃないのかとか、言いたいことはものすごくあったけど、とりあえずもう放っておくことにした。
……触らぬ神に祟りなし、だ。