どうにも忘れられない景色がある。
それは穏やかで澄み切ったエメラルドグリーンの海。
そして麦わら帽子を被り長い黒髪を風に遊ばせながら俺に微笑みかける女性……
その情景を思い出す度に、胸が締め付けられるような切なくて苦しい感情も同時に湧いて出る。
だけどその女性は誰なのか、そもそもその海はどこにあるのかはさっぱりわからない。
なぜなら俺は事故に遭って記憶を無くしてしまったから。
過去の一切を忘れてしまった俺だけど、どうしてだかその景色だけははっきりと覚えている。まるで昨日のことのように。
それだけ俺の心に残っているということだろう。
名も知らぬ君と見た景色。それさえ思い出せたら俺の記憶もきっと蘇ってくるはずだ。
悲しい別れがあった。
たくさんの英雄が世界を守って消えてった。
あんなに仲良くしてたのに、もっと仲良くなりたかったのに、光になって消えてった。
僕の心にぽっかり空いた穴はしばらく空いたまんまで当分埋まりそうもない。
家の屋根に登り、晴れ渡っている大空を見上げ消えてしまった英雄たちの名前を呟く。
あなたたちがその命を賭して守ったこの世界を僕が守り、旅をしながら生きていく。
僕も英雄の一人なのだから。
だけどもし、叶うのならば、ちょっと気恥ずかしいけどあなたたちと手を繋いでいろんなところに出かけたかった。
英雄とかそういうのは関係なく、今この世界を生きる者として未来を、平和を共に感じたかった。
その時は僕も世界を幾度となく救った英雄などではなくて、あなたたちの友達として振る舞っていたはずだから。
§
ちまちま進めていたド◯クエ10のver6クリア記念&思いを吐き出すため書いてみました。
主人公の背負うものが多すぎたり運命が過酷すぎやしませんかと思うのは、私が人間男の子でプレイしているからなのか……
まあそれはともかく楽しいですよドラ◯エ10。
良かったらぜひプレイしてみてください。
超有名某オープンエアなアクションアドベンチャーゲームをプレイ中。
操作は友達。
収集要素を全て集め、主人公も最大まで鍛えた完全コンプリートデータの世界をさすらっている友達だけど、初プレイなのも相まってめちゃくちゃ楽しそうだ。
現に今も素材集めに夢中になってここどこ〜? と笑いながら言っている。
「このゲームガチで目的すぐ見失うし迷子になりやすいんだよねー」
「わかるわー。やりたいことがポンポンでてくるもん。
これ本当時間溶けたでしょ!」
「あー……まあね」
苦笑いしながら言うと、だよね! と友達が全力で肯定してくれた。
発売当時、迷子になりながらもその迷子が楽しくて仕方がなかった。
その感覚を今は友達が味わっている。
あの時の感覚が時を経てリンクしているなんて、なんだかとても凄いことな気がした。
仕事でヘコんだことがあったり、日常生活でしょんぼりするようなことがあったり。
そんな時は大好きなものに囲まれてゆっくり過ごしたい。
大好きなぬいぐるみ、大好きな香り、大好きな食べ物に大好きな音楽。
それらに体をうずめて楽しいことだけを考える。
そうしたら明日も頑張ろうって気分になれる。
まあたまにここから出たくな〜い……になる時もあるけど。
だけどそれでも自分の大好きなものはいつでも寄り添ってくれる。救ってくれる。
大好きを増やしていけば心が豊かになり生活に彩りが出る。
そうして大好きなもので満たされている部屋はいつしか自分自身の楽園になるのでしょう。
私には大好きな彼がいる。
彼は私のことを第一に考えてくれて、私の絵をいつも褒めてくれる。
私が趣味で描いている絵は自他共に認める下手くそだけど、彼はとてもいい絵だねと褒めてくれる。
それだけで私は嬉しい。
だけど私はちょっと欲張りで、彼と一緒に私のやりたかったことやってみたかったことを一つずつ叶えていきたいという夢を抱いている。
そんな夢を見るくらいあまりにも今が幸せすぎるから、こんな幸せでいいのかなと彼に言ったら叶わぬ夢なんてないんだよ、と優しく囁いてくれた。
ああ、出会うのがもうちょっと早かったら私達は普通の恋人になれたのかな。
私の今世はもう終わっちゃったけど、未練を全部晴らし終わって成仏したら必ず彼の元にいきたいな。
だって叶わぬ夢なんてないんだから。