どうにも忘れられない景色がある。
それは穏やかで澄み切ったエメラルドグリーンの海。
そして麦わら帽子を被り長い黒髪を風に遊ばせながら俺に微笑みかける女性……
その情景を思い出す度に、胸が締め付けられるような切なくて苦しい感情も同時に湧いて出る。
だけどその女性は誰なのか、そもそもその海はどこにあるのかはさっぱりわからない。
なぜなら俺は事故に遭って記憶を無くしてしまったから。
過去の一切を忘れてしまった俺だけど、どうしてだかその景色だけははっきりと覚えている。まるで昨日のことのように。
それだけ俺の心に残っているということだろう。
名も知らぬ君と見た景色。それさえ思い出せたら俺の記憶もきっと蘇ってくるはずだ。
3/21/2025, 2:42:29 PM