バスクララ

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2/16/2025, 11:50:09 AM

彼の左手の薬指におもちゃの指輪を嵌める。
それだけなのに幸せな思いで心が満たされる。
彼がゆっくりと私の左手の薬指におもちゃの指輪を嵌める。
きらりと輝くそれに胸がいっぱいになって思わず涙がこぼれた。
彼は優しく私の涙を指で拭って、唇に軽く触れるだけのキスをした。
感極まって彼を抱きしめ、思いつく限りの愛の言葉を彼に叫ぶ。
今日は私と彼の結婚式。
だけど神父も参列者もいない。それどころか結婚式場ですらない。
彼の部屋でひっそりと行われた結婚式。
私達はまだ中学生だから本物の指輪なんて用意できなかった。
だからいつかきっと大人になったら本物の指輪で立派な結婚式を挙げる。
……でもその時まで待ち切れない。そう思うのは我儘かな。
ねえお願い。時間よ止まれ。
せめて一日ぐらいはこの時のままがいいの。

2/15/2025, 12:54:28 PM

僕はいつだって君を第一に思っているよ。
だから怖い時や心細い時には僕の名を呼んで。
君の声がする方へ全速力で駆けていくから。
ご主人さまからもいざという時は君のことを守るよう頼まれているんだ。
だから安心して。
君が天寿を全うするその時まで僕は生きられないけど何度だって生まれ変わって君のことを守るから。
君の声ならどんなに小さくても僕は聞き逃さない。
何があってもどんなことがあっても絶対に。
僕は君だけの忠犬だから。

2/14/2025, 1:11:52 PM

シンプルだけど直球な感謝の言葉。
それが『ありがとう』
言った方も言われた方も嬉しい気持ちになる魔法の言葉。
だけど……だからこそわたしはそれを言いたくない。
誰かに心を許すつもりもないし、なれ合いもしたくない。
誰かに感謝することはある。でもその時はどうもと言えばそれで伝わる。
怒られる時もあるけど、それでいい。わたしは孤独に一人で生きていくんだから。
もう誰かを失うような悲しい思いはしたくないの。
一人ぼっちの魔法使いの女の子。わたしはそれ以外の何者でもない。
幸せにならなくていい。誰かにありがとうと感謝されなくてもいい。
家族やお姉さんはもしかしたらこんなわたしを見たら怒るかもしれないけど、その人たちはもういない。
それにわたしは今のわたしに満足している。
わたしの人生はこれでいいの。
……そう、これでいいの。

……そんなわたしがとある人たちとパーティを組んである一つの幸せを手に入れるのは、少し未来の話……

2/13/2025, 12:28:31 PM

スマートにそっと伝えたい。
互いに気まずい雰囲気になりたくないし、相手に恥をかかせたくないもの。
そう思ってたけど、いざその時が来たらやっぱり考えちゃうわね。
人も多いから声をかけるのは恥ずかしいし、いっそのことスマホに文字を表示させて伝えればいいんじゃないかって。
でもそうして悩んでいたらその人が降りてしまったから結局伝えられずじまい。
別の場所であの人が恥ずかしい思いをしてなければ良いけど……
あーもう……ここまで悩むんだったらやっぱり電車内でも勇気を出してズボンのチャックが全開ですって言えば良かったじゃない! 私のバカバカ!
よし、もし次があれば今度こそ伝えるわよ!

2/12/2025, 1:05:33 PM

「聞いて驚けっ! なんと私は未来予知者なのだ!」
 朝っぱらから開口一番、俺の愉快な幼なじみ殿はものすごいドヤ顔で言った。
 俺は内心こいつはまた変なことを始めたのかと呆れていたが、通学路の暇つぶしにもってこいな話題なので詳しく聞くことにした。
 乗り気になった俺を見てご満悦な幼なじみ殿はそれはそれは上機嫌で声高に語り始めた。
「あのねぇ、夢で星占いを見てたのね。そうしたらさ一位が双子座で、最下位が牡牛座だったんだー!
で、今日の運勢も一緒。だからこれはもう完璧な未来予知に間違いないってわけ!
どうどう? 今から私に投資しない?」
 目をキラキラ輝かせている幼なじみ殿に俺は努めて冷静に返す。
「何で投資すんだよ」
「そりゃあ……有名になるために?」
「なんだそりゃ。つーかそれ、未来予知じゃなくて予知夢の間違いだろ」
 俺がそう言うと幼なじみ殿は目も口もまんまるな顔した。鳩が豆鉄砲喰らったようという言葉はまさにこの顔なんだろうなと少し感心したほどだ。
「えっ、未来予知にもジャンルがあるんだ!?
……でもまあ、未来の記憶を覗き見てるようなもんだから色んなジャンルがあってもおかしくないのか。
やっぱ君って賢いね!」
 いい笑顔の幼なじみ殿に俺は心底心配になる。
 こんなアホでこれから先大丈夫なのだろうかと……

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