一人はいやだ。
悲しい気持ちになるから。
親も弟もいなくなってしまったあの日を思い出してしまうから。
幸せだった。これ以上何も望まないくらい幸せだった。
だけど今は心にぽっかり穴が開いて、何も感じなくなった。
今俺の周りに友達も仲間もいるけど、誰もこの穴を埋められない。埋めることなどできやしない。
この穴に名前をつけるなら、おそらくそれは『寂しい』だろう。
あの日に戻りたい。幸せだったあの日に、……帰りたい。
家族じゃないとこの穴はどうにもできない。
今のままじゃ広がる一方だ。
……ほら、本音を話したよ。
だから早く、この穴を埋めておくれよ。
俺を家族と呼ぶのなら、早くこの寂しさから解放してよ!
お願いだから……
寒い冬は一緒に何をしましょうか。
二人で毛布にくるまって、あたたかいココアを飲みながら星空でも見ましょうか。
この時期は空気が澄んで星がとても綺麗に見えますから、きっとあなたも退屈しないはずですよ。
星にはあまり詳しくないですけど、あなたと一緒に見る星はとてもきらめいて見えるのでしょうね。
だけど、あなたほどキラキラ輝いている星はないでしょう。
ふふ……大好きですよ。
……もう、照れないでくださいよ。私だって恥ずかしいんですから。
「だからね〜……で、……があって……」
「ふーん。……で、……なんだね〜」
隣の席の女子高生たちはとりとめもない話をずーっとしている。
私は人待ちで喫茶店にいるけど、かれこれ一時間は経つ。その間、女子高生のおしゃべりは止まることがなかった。
私も女子高生の頃はそうだったなあとしみじみしていると、待ち人から着信が。
『ごめん! やっと最寄り着いた! 今どこ!?』
「コーヒーとサンドイッチが美味しい駅前の喫茶店」
『OK! 奢るわ!』
元気のいい宣誓と同時に電話が切られる。
さてさて、待ち人が来るまでの数分間、冷めたコーヒー飲みつつ彼女たちの話に耳を傾けていようかな。
こういうとりとめもない話こそ案外いい暇つぶしになるんだよね。
朝起きたら喉が痛い。風邪引いちゃったかなあ……。
おかしいなあ。お腹出して寝てないし、お風呂から上がったらすぐに体拭いて髪も乾かしてるのに……。
外から帰ったら手洗いうがいも毎日ちゃんとしてるし、みかんもこの時期は毎日食べてる。
寝室には加湿器もつけてるし、湯たんぽだって完備してる。
学校からもらってきちゃったのかなあ。
でも、露骨に咳とか鼻水とか出してる人、そんなにいないけどなあ。
うーん……? じゃあなんで喉が痛いのかな……?
何か変わったことしたっけ……?
あっそうだ、昨日カラオケで熱唱したんじゃん!
そうだ、それで痛いんだ。あー、スッキリした。
さてさて、原因がわかったから朝ごはん食べてのど飴舐めてうがいしてマスクして学校に行きましょうかね。
今日からテストだ。ほとんどノー勉だけどなんとかなるっしょ。
それが終わったら楽しい年末旅行だ。それまでに風邪治さなくっちゃね。
冬になったら雪が降って積もるものだと信じていた。
まあその思いは小学生になる頃にどうやら違うらしいと悟ったけど。
僕が住んでいるこの地域はあんまり雪が降らない。
降ったとしても積もらないから、雪遊びなんて夢のまた夢だ。
それでも雪が降ると嬉しいから、僕は雪を待つ。
それに雪が降ったら、ものすごく寒くてもなんとなく諦めもつくからね。