バスクララ

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12/12/2024, 1:50:47 PM

『離れていても心と心は通じ合ってるよ。
だから心配しないで。私は新天地でも元気でやってるから』
そんな手紙が届いたのはあの子が引っ越してすぐのことだった。
幼稚園からの友達。小学校、中学校と同じ学校だったから高校もあの子と同じところにしようと思っていた。
だけど、親の都合であの子は遠くに引っ越すことになってしまった。
とてもショックだったし、信じたくなかった。
クラスでお別れ会をやった時だって私はわんわん泣いた。周りが引くぐらい泣いた。
引っ越し当日、私の思いを綴った手紙を渡してやっぱり泣いた。
あの子はそんな私を抱きしめて優しく撫でてくれた。
親以外の人から抱きしめられるのは初めてだったし、ちょっと照れたけど……温かくて、ふわふわだった。
あの感覚をもう一度味わいたいな……。
いやそれよりも今は手紙のお返事を書かなきゃ。
心と心が今より以上に、もっともっと強固に通じ合えるように。
あの子に届け、この思い。

12/11/2024, 12:36:14 PM

何でもないフリは大変だ。
わかっていても、察してしまっていても、ポーカーフェイスですましてないといけない。
私はひょんなことから妹が私の誕生日にサプライズプレゼントをすることを知ってしまって、それ以降妹がこそこそしてても何でもないフリをし続けている。
もともとポーカーフェイスなんて不得意だけど、本人が知っているサプライズなんてサプライズじゃないからなんとか頑張っている。
全ては妹の笑顔のため。お姉ちゃんは地味な努力をしています。
そして私の誕生日。私の頑張りも妹のサプライズも実を結んだ。
はー、やれやれと思っていると母が一言。
「二週間お疲れさま、お姉ちゃん」
……母にはバレていたようだ。

12/10/2024, 1:15:16 PM

仲間だった。
仲間だと思っていた。
ちょっとヘマをやらかしただけなのに、彼らは俺を許さなかった。
口々に俺を糾弾し、ケジメをつけろとナイフをよこしてきた。
これで命を捨てろということだろう。
だが、こんなことで人生終わらせたくねえ。
だから逆に彼らの人生を終わらせてやった。
辺り一面に広がっていく赤と、その上に横たわる肉の塊たち。
俺の手も心ももう汚れきっているから今更何も思うことはない。
まあでも……仲間だった奴を手にかけたのはこれが初めてだな。
願わくば次が来ないことを祈っておこうかね。

12/9/2024, 12:19:18 PM

どこまでも行ける、どこへだって行ける。
おばけが出てきそうな暗い所だって君と一緒に手を繋いでいたら大丈夫、全然怖くないんだ!
君の手は魔法の手だね。だって繋いでいたら全然寂しくならないし、あたたかいのが伝わってくるんだもん。
優しいや大好きって、きっとこんな手なんだろうね!
ねえねえ、今日はどこに行く?
ぼくは君の行きたいところに行ってみたいな!

12/8/2024, 11:29:58 AM

友達と二人で超有名RPGを実況中。操作は私。
実況といっても録音も録画もしてない、ただ駄弁りながらプレイしてるだけだけど。
既プレイの友達が極力ネタバレをしないように言葉を選びながら喋って、初プレイの私はそれを受けて反応を返したりストーリーの感想を言ったりしている。
教えてもらったことに口ではありがとうと返すけど、心の中ではごめんねを返している。
なぜなら、私はこのゲーム初見じゃないからだ……!
過去に一世を風靡した国民的RPG、プレイこそしたことなかったけど、二次創作やらRTAやらTASやらを見まくっていた。だからストーリーの内容もラスボスも裏ボスも全部知っているのだ……!
それを友達に言わない理由はただ一つ。友達が純粋にこのゲームが大好きだから。
楽しそうにキャラやストーリーを語るあのキラキラした瞳と、プレイした時の感動を熱弁されて、
「あれをやったことがないなんてとんでもない!」
とまで言われてしまっては、とてもじゃないけど実況動画で全部知ってるなんて言えなかった。
だから私はこのゲームについて何も知らないことを演じている。
「……ありがとう、ごめんね」
「いいっていいって! 初見はそんなものだから」
……さすがに友達を騙しているようなものだから罪悪感が募る。
後日、何かプレゼントしよう。もちろん友達が今一番欲しいものを。

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