『大丈夫。私とあなたはまたくっつくから。
今はこうしてはなればなれになってるけど、私はまたあなたの元に行くわ。
だから心配しないで。
そんな保障はどこにもないなんて……随分悲観的ね。
ほら思い出してみて。私がここに来てから一日以上あなたとくっつかなかったことなんてなかったでしょ?
もう……わかってるけど早く来てなんて、あなたってば心配性なんだから。
そういうところも可愛いんだけど、でもだーめ。今はまだその時じゃないの。
あと数分待ってね。愛しい愛しいあ・な・た!』
……っていうキッチンタイマーと冷蔵庫の恋愛もの考えたけどどう? 薄い本のネタになるかな!?
……え? 上級者すぎて上手く描けそうにない?
いやいやいや、全然上級者じゃないよ!
ほら、はなればなれになっちゃって、でも自分では動けないけど互いを愛し合ってる男女のお話だから普通の話じゃん!
……ってえ? なんで後ずさるの?
え、どこ行くの!? ちょ待ってよー! ねえってばー!
こうして見る分にはかわいいんだけどね……
そう思いながら私は友達のスマホに映る子猫を眺めていた。
友達はかなりの猫好きで三匹も飼っている。今見せてもらっている子猫は新しくお迎えした子だそうだ。
お世話とかエサとか大変そうだけど、それすらも楽しいみたいで毎日充実しているとSNSに呟いていた。
私は子供の頃猫に引っ掻かれたことがあって、それ以来猫が怖くなってしまった。
友達もそれをわかっているから私を家に呼んだりしないし、猫を連れてきたりしない。
写真を見せるのも子猫だけだ。
申し訳ないと思うと同時にマジありがたいとも思う。
成猫はやっぱりまだ怖いから。
……でも、申し訳ないけど猫の良し悪しなんてあんまりわかんないなあ……
丸まって寝ている子猫がいかにかわいいのか力説している友達に相槌を打ちながら、その寝姿がどう見ても毛玉というのは言ってはいけないことなのだろうか。
と考えていた。
風がサアッと吹いて、落ち葉と彼女の髪を巻き上げていく。
それがとても絵になっていて……僕の語彙力では言い尽くせないほど、綺麗だった。
舞い落ちてくる赤い葉っぱと、少し困ったように髪を整えている彼女。
ひらりと頭に落ちてきた葉っぱがまるで髪飾りみたいで、思わずかわいいと口をついて出てしまった。
すると彼女はちょっと照れたように笑ってありがとうと告げる。
……この些細な幸せがずっと続きますように。
そう願わずにはいられなかった。
また会いましょうなんて言葉、私にとっては叶わないも当然の言葉だ。
そう言ってさよならした友達みんな、ここ数年会ってないんだから。
だから私はもう言わないことにした。
別れの言葉はそれではさようなら。それだけで充分。
現在時刻は午前一時を少し過ぎたところ。
明日も学校があるが、ゲームについついのめり込んで気がついたらこんな時間になっちまった。
寝るにしても腹が減っちまって何か食べないと寝られない状態だ。
よし、夜食を食べよう。
そうと決まれば廊下を抜き足、差し足、忍び足……
そーっとリビングのドアを開けて、棚からカ〇リーメイトを一箱拝借し、食う。
普段食べるよりもめちゃうめぇ! いつものチョコ味なのに!
あっという間に一箱食べ終わり、そそくさと部屋に戻る。こんな時間まで起きてて、しかも何か食ってることがバレたらお母さんに怒られるしな。
……しかしこの時間に食べると本当にいつもより美味く感じるんだよなあ。
バレたら怒られるっつースリルがより美味くしてんのかねえ?
ま、いいや寝よ寝よ。歯磨きしてねえけど、一日ぐらい大丈夫っしょ!
……そして翌日、迂闊にもリビングのゴミ箱に捨ててしまっていたカ〇リーメイトの箱を証拠に、俺はこってり絞られたのだった。