からりと晴れた空。
冷たい空気はほんのり甘く感じた。
「いい天気だよなぁ、ほんと」
へらへら笑っていれば、頭上から拳が降ってくる。ばきっ。目の辺りを殴られたけどまったく痛くなかった。
嘘だ。めちゃくちゃ痛い。容赦なく殴りやがって、いてぇな。
ばきっ。ぽた。ばきっ。ぽた。
「……泣くのか殴るのか、どっちかにしろよなぁ」
一週間ぶりの冬晴れの日、俺は最期を迎える。
息を吸うたびに傷が引っ張られて激痛をもたらし、吐くたびに温かい血が流れ出ていく。
背中側の湿った感触から、絶対に死ぬとわかる。助かる希望も可能性も、残念ながらありはしない。
「ふざけんな。お前、お前、絶対に帰るんじゃなかったのかよ」
「ははっ、俺、知ってるぞ。死亡フラグってやつだ」
自分で死にますって言ってたようなもんだよな、あれ。今思えばずいぶんとバカなことを言っていたと思う。
もう二度と戻れるはずがないのに。妻子の待つあの家に。小さな手が俺の頬に触れる。母になった妻の慈愛に満ちた笑顔。
あぁ、思い出したら、止まらない。
帰りたい。帰りたい。戻りたい。戻りたい。
もう二度と会えやしない。触れることはできない。
娘の成長も、妻のたくさんの表情も、なにもかも知らないまま、俺の時は止まる。
あ、とりーーー
手を空に伸ばす。何を掴みたいんだろう。
理解する前に、俺の意識は途絶えた。
※創作ではありません。
正直な気持ちを綴れば、私は今年の抱負という言葉が好きではありません。
とても気まぐれな人間なので、頑張りたい時と頑張りたくない時が頻繁に入れ替わります。
だから、今年いっぱい頑張る!頑張り続ける!ということが苦手です。抱負は文字の通り、私の(特に心の)負担となります。
自分でも、頑張るかダラけるかのどちらかしかない、みたいな極端な考えだなぁと思います。
抱負…のようで、そうでないもの。今年をどんな年にしたいか。
不器用から器用になろう。
走っていたら、いつのまにか自分の位置が分からなくなる人間だって、もう気づいてる。
だから飛ぶ。走って分からなくなるなら飛ぶ。疲れた時にだけ走るようにすればいい。
たくさんお話を書きたい。
好きな漫画やアニメ、小説や新書にどっぷり浸かりたい。
恋人はまだできなくていい。
だけど、いつか大切な人を見つけられるように準備をしよう。
今はこの愛情を私の友人に注ぐ。
ここだけの話、友人たちを恋人のように愛しくて大切な存在だと思ってる。
言葉にできないけれど、本当に大切な人たち。
一年はあっという間だから、いろんな感情を、体験をしよう。
私はそんな年にしたい。
新参者ですが、私の作品がみなさまの癒しになれたら幸いです。
お付き合いいただきありがとうございました。
良い休日を、ごゆるりとお楽しみくださいませ。
カーテンを開け、コーヒーを片手に日の出を眺める。
じわじわと下の方から、赤に染まっていく空、先導するように昇っていく太陽。毎年見ているけれど、飽きたりはしない。
零時を回っても、初詣に行っても、新年がきたという感じがしないのだ。私の始まりは、いつもこの日の出から。
コーヒーを啜った。白い息を吐き出す。
背中に重みを感じた。太い腕がお腹に回され、身体が密着する。寝起き特有の高めの体温に、私は苦笑いした。
「おもたい」
「……置いていく方が悪い」
肩にぐりぐりと頭を押し付けられる。髪の毛がくすぐったくて身を捩るが、まったく動けない。それどころか、さらに力が強まっていくものだから、いさぎよく諦めた。
されるがままになりながら、またコーヒーを啜る。
「あけましておめでとう」
「夜も言ったじゃん」
「この日の出見たら」
肩が軽くなった。ちらりと見上げれば、彼の視線はもう随分と赤くなった空に向けられていた。やがて視線がかち合う。
「また言いたくなった。毎年見てるの、これ」
「そうだよ。ちょっとした、新年のルーティン」
またぎゅうと抱きしめて、彼は満足げに笑った。
「いいね。来年も見よう」
「別れなきゃね」
「不吉なこと言うな」
朝のコーヒー、ベランダから見える日の出。今年のスタートはなかなか悪くない。そう思う。