「手のひらの贈り物」
封筒を逆さにすると中から見慣れないコインが一枚出てきた。
届いた時に何か中に入っているのは気づいていたけどコイン一枚だけだったとは、添えられていた手紙にはこう書いてあった。
「元気ですか?僕は元気です!今ここにいます。」
いきなり始まった謎解きのような状況、いかにもアイツらしい。
海外に行くことになったと言っていた友人から来た楽しい難問に笑いつつ僕は手の中にあるコインを見つめた。
「心の片隅で」
最後のダンボールの蓋を閉じる、8年間住んだこの街に明日僕は別れを告げる。
就職が決まり生まれ育った地方の港町を離れ不安いっぱいで始まったこの街での一人暮らし、都会に馴染めるか不安だった。
そんな不安も仕事の忙しさに埋もれいつのまにか都会での生活があたりまえになっていった。
そんな僕が漁師を継ぎたいと父に伝えたのは先月のことだった。
「雪の静寂」
昨日から降り続く雪はどこまで積もっただろうか、おそらくかなり積もっていると思う。
普段は聞こえる外の音が今日ばかりは雪でかき消され静まり返っているからだ。
僕が住むこの地域で雪が積もるのは年に数日だから今日みたいな日はかなりめずらしい、街は大騒ぎになるだろう。
でも今の僕にそんなことは関係ない
温かいベッド中の僕の腕の中で優しく眠る彼女をそっと抱きしめ遠距離で会えなかった時間を取り戻すように今は2人でゆっくり眠るだけだ。
「君が見た夢」
卒業したら君の中から僕はいなくなるだろう。いや、おそらく君の中に僕がいたことはない、だとするといなくなるということはないのかもしれない。
存在すらしていないのだから。
僕はこの3年間想いを伝えることも仲良くなることも出来ずまるでエキストラのように君のクラスメイトA、B、Cとして3年間過ごしたのだから。
エキストラでもいいんだ。
たまたま同じクラスだった人でいいから君が見る夢の中に偶然僕が登場し君の記憶の片隅にある忘れていたクラスメイトA(僕)という存在を思い出してくれれば。
なんて叶うことのない都合が良すぎる願いに僕は今日も大いに期待してしまっている。