霜川菜月

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8/31/2025, 10:57:52 AM

8月31日、午後5時


未だ白紙の原稿用紙。

「読書感想文」という名の悪魔の宿題を前に、
高校3年生夏休み最終日の俺は、リビングの机に突っ伏していた。

毎年やってくるこの宿題も、やっと今年でおさらばだ。
あー、はやくやんないとなぁ...はやく.......






ガチャガチャッ
バタン


「ただいまー」

玄関が開く音が聞こえて、仕事を終えた母親が帰ってきたようだ。キッチンから夕飯の支度を始める音がする。ということは...もう6時じゃねえかよー。

まずい。夕飯がここに並ぶまでには書き終わらないと!

そう思い立って顔を上げた瞬間、




「あれ?母さん...?」

さっきまでキッチンから音がしていたはずなのに、人がいる気配がない。


不穏な気持ちになって手元のスマホを見ると、
8月31日、午後5時 だった。


8/31/2025, 8:32:45 AM

ふたり


部屋がオレンジ色に染まる頃、
遠くで夕方5時のチャイムが聞こえる。


外にはそろそろ取り込んで欲しそうな
風に揺れる洗濯物。


床に座っていた僕の腰に、
ソファに座っている君の足の親指が触れる。


「ねえ、今日晩ご飯どうする?」


振り向くと、見慣れたスッピンの君の顔。


「なんでも...って言ったら、怒るやつだよな」


笑いながらそう言うと、わかってるじゃないと笑いながら君が隣に座る。


君とふたりだけの
世界で一番愛おしい週末。