【忘れたくても忘れられない】
僕は昔から良く変なやつに好かれる
こいつもそうだ、祖父の家に来たばかりの頃
突然僕の側に近寄って来たのがこいつだ
僕も子供だったから特に気にすることもなく、
仲良く遊んでいた
今日もあいつと遊ぼうと山に向かった
山に着くとあいつが居た
「待ってたぜ、ほら、早く行こう」
『おう、今日は何しようか』
「なんでも良いぜ」
『じゃあ、この山を探検しよう』
「分かった、じゃあ、早く行こう」
沢山遊んだ、川に、秘密基地、草滑り
あいつと一緒だとなんでも楽しかった
夢中に遊んでいるうちに夕暮れになっていた
『あぁ、もう夕暮れか』
「ありがとうな、お前のお陰で俺も成仏出来そうだ」
『えっ…何言ってるんだよ』
「俺さ、この山で遭難して死んだんだ
もっと色々やりたくて、それが未練になって
どうしても成仏出来なかったんだ
でも、お前のお陰で俺もようやく成仏出来そうだ」
『そうか…』
「泣くなよ、男だろ?」
『ばか、泣いてねぇよ…』
「そっか…
どうしても辛かったら俺のこと忘れて幸せになれよ」
そういうあいつは気まずそうな悲しそうな顔をしていた
だから僕はあいつに言ってやった
『お前みたいな奴、忘れたくても忘れられねぇよ!』
そう言ったら、あいつはにっかり笑って消えていった
“今度は普通の友達として逢えたら良いな”
今ではそんな風に思う
【やわらかな光】
今日は灯籠流しの日だ
前回は見ているだけだったが、
今回は僕も灯篭を用意している
灯籠流しには火を灯した灯篭をお盆の供え物などと
一緒に海や川に流し、死者の魂を弔う意味があり、
お盆の送り火の一種らしい
つまり先祖を送り出す大切な行事だ
沢山の灯篭のやわらかな光が川を照らす
“また来年”
そんなことを思いながら流れゆく灯篭を眺める
【鋭い眼差し】
今日は、僕にとって試練のような日だ
だって、今日はずっと入社したかった企業へ
面接に行くのだから
ゆっくり息を吸って、ゆっくりと息を吐く、
大丈夫、今日の為に練習もいっぱいしたんだ
ドアをノックして面接会場に入る
面接官の鋭い眼差しが僕に向けられる
“あぁ、今すぐここから逃げ出したい”
そんな衝動に駆られる
気づいた時にはもう面接は終わっていて
会社を出ていた
そっと息を吐く、僕はやり切ったはずだ
“どうか受かりますように”
そんなことを思いながら僕は帰路につく
【高く高く】
“目標は高く持ちなさい”
親も先生も大人はみんなそう言うから
こうしたいああしたいと思うことは自由だから
もっと高く高く、手を伸ばせ
夢を掴む為に
もっと広く広く、手を伸ばせ
仲間を見つけ手を取り合う為に
上ばかり見ていると転んでしまうから
たまには下を向いても良い
疲れてしまったら立ち止まっても良い
また歩き出せば良いから
【子供のように】
いつからだろう、夢を見れなくなったのは
いつからだろう、やりたいことが分からなくなったのは
いつからだろう、現実と向き合い始めたのは
私には夢が、やりたいことがあった…はず、だ
でも、それがなんだったか何一つ思い出せない
きっと大人とは夢を見ることを諦め、
現実に適応した子供の姿なんだと私は思う
でも、たまに心に少年・少女を宿した大人を
見かけることがある
きっとあの人たちは夢を持ったまま、
現実に適応した子供たちなのだろう
私は彼らのようになりたい、
彼らのように夢を持ったまま大人になりたい
子供のようにただ純粋に
夢を、理想を語り合えるそんな大人に…