冬になったら、一緒に、イルミネーション見に行こうね。
冬になったら二人であったまろうね。
そうやって、約束した。
でも、果たせなかった。
私からお別れ言ったんだ。
だって、春になったら君は、大学生。
春になった未来を私は、描けなかった。
春になったら、春になってしまったら…
私は私からミライを放棄した。
自滅した。
でも、その方が、何倍も辛いこと、あとになって分かったんだ。
冬になったら、ずっと思い出すんだ。これからも。
秋風は、湿気の少ない爽やかな風
なのに、それは少し、せつなさを持って
やってくる
爽やかさとせつなさ
父が亡くなった日は、秋風の吹く爽やかな日だった。
爽やかなのに、せつない。
不思議な気持ち。
秋風は、そんなふうに感じる風。
あなたとわたしじゃ、住む世界がちがう。
そんなことを思いながら付き合っていた。
だから、苦しかった。
そもそも住む世界がちがうって言葉に
苦しめられるわたしがだいきらい。
わたしの住む世界がダメみたいじゃん。
壊れかけた蒼い恋愛。
でも、だいすきだった。
住む世界の違うあなたが、あのときの全てだった。
昭和の賑わいを見せる商店街で育った。
幼い私は、いろんな店を行き来するのが日常であった。
服屋のマネキンの真似をする。
試着室でかくれんぼ。
肉屋の冷蔵庫に入り、探検。
金物屋の奥で宝探し。
思春期になり、そんな育ちを恥ずかしく思ったこともある。
全てがキラキラしていた。
今になって、それがどんなに貴重な思い出なのかに気付く。
懐かしさとは、せつなさを伴って訪れる。
あのとき私が別れを言わなかったら。
もうひとつのパラレルワールドを考える。
あのとき大学生になる彼に対して不安がなかったら。
まだ高校生の私には、余裕なんてなかった。
違う世界の開けた彼に、すがるミライが嫌だった。
もうひとつの物語でも、ミライはきっと変わらない。
パラレルワールドでも、続きは多分
セツナクテクルシイ。