あら、こんにちは
ここはどこって顔してますね
ここは...あなた達が使っている言葉で
適切かどうかは分からないのですが
多分天国のちょっと手前くらいです
でもあなたは死んでないですよ
死にかけってところでしょうか
あの木が見えますか?
凍えるような冷気が漏れ出てくる木
感電してしまいそうな木
活力がみなぎるような光がさす木
枯れているかのような木
そして燃えているような木
どの木が好きですか?
燃えているような木ですか?
珍しいですよね
あまりここにもない木なんですよ
葉がかれると一段と赤く燃えて蒸発するかのように
バラバラになります
そうしたら下界の誰かの命が朽ちた
というとこが分かります
そんなすごい木なんです
今1枚消えましたね
あれ?見えませんでした?
あっ、そろそろあなた別のところに
行かないといけないみたいです
そういえば葉が蒸発するのは何も関係の無い人しか
見れないんでしたっけ?
さっきの葉はあの人のだったんですね
今日の月の光、綺麗だと思わない?
うっすらと光がさして来てるから
この部屋の様子が全部見えるよ
ねぇ、君も綺麗だと思うでしょ?
動かなくなった恋人の身体を見ながら
私は問い続けた
ねぇ
置いていかないで
離れないって言ったじゃん...
どうせ捨てられるってわかってた
実験台だったから
私はもう人間じゃないかもしれないから
私 という自我があるうちは何も起こらない
だから大丈夫だと思ってた
でもやっぱりみんな離れていく
なんで離れていくのかが分からない
きっかけが分からない
そんなに私はいらない存在ですか?
どんどん遠くなってくる足音を屋根から見つめていた
あと一歩で君が電車に乗るその瞬間私は意識を失った
今回ハ誰ニモ見ラレズニ仕留メラレタ
前回ハバレチャッタカラナ
次ハ誰ニシヨウカナ?
ねぇ...私達なんでこうなっちゃったんだろうね...
やっぱり合わなかったんだろうね...
もう好きじゃなくなったと言えば嘘になっちゃうけど
別れよう...私達もう別の道を行くしかないと思うの
『わかった、バイバイ』
やめてよ...そういう所が好きなんだよ...
最後の最後に...
はぁ...
まだ明るくなりそうもない空を眺めて
私は1人帰路に着いた
あなたが見える...
30年前と何一つ変わってないわねぇ
あなたが居なくなってからとても私寂しかった
「お母さん」と呼んでくれる娘も
「おばあちゃん」と呼んでくれる孫もいるけれど
私の名前を呼んでくれるあなたが
とても大切でした
虹がキラキラしてて綺麗ですね...
老人でも渡りやすい緩やかな虹で良かったわ
1つの輝きが小さくなっていく度に
月が一層強く輝いていた