テストが返ってきた
ノー勉で挑んだから酷かった
空が赤黒かった
校庭にカラスがゴロゴロと転がっていた
友達の瞳孔が縦や横に細長く開いていた
教室は薄暗かった
僕の瞳孔だけ普通だった
瞳孔が変な僕だけ点数が悪かった
テストの前日までみんな僕みたいな瞳孔だったのに
テストの日みんな動物みたいな瞳孔になっていた
みんなおかしくなっていた
世界が終わるなら今がいい
女の友情くらいすぐに解けるのに
簡単に元に戻すことが出来る靴紐
あなたを羨ましいと思わなかったことは無いよ
今私には解けた紐を結ぶのを待ってくれる人がいない
ねぇ私は何を間違えたのかな?
今日も喧嘩したことを信じたくなくて
靴紐を何度も結んでみるが効果はやはり何も無かった
涙の跡がうっすらとついた靴紐は
この学びやを去るまでずっと変わらないのだろう
今日はテストが返ってくる
テストの合計点が高い方が低い方になんでも一つ
命令できるというよくある約束をした
この授業で返ってくるもので最後だ
割と自信があるから勝てたかも
なんて考えながらテストを受け取る
一緒にその教科の順位も渡される
クラス3位...
相手が上にいなければいいが...
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴ったと同時に席を立つ
「『何点だった?』」
見事にハモる
負けた...
今回全部自信あったのに
彼女は『私が勝ったからお願い聞いてね』と言った
『私と付き合ってください』
びっくりした
え?聞き間違い?いや、ないか...
『返事は今度聞くね』
そう言って彼女は教室を出ていった
答えはまだ出せなかった
ねぇ、そこのあなたちょっとお隣失礼してもいい?
あなたはここら辺の人?
私ここから少し遠い街から来たんだけど
一人旅って楽でいいわね
最近疲れちゃって無計画に数週間旅しようって思って
今旅をしてるんだけれど
景色も綺麗だしみんな優しいし素敵だわ
あたしが羨ましい?
何言ってるのよ
こんな事しないと気が紛れないんだから
羨ましいもクソもないわ
でも自分の意思で生きてるって感じがしていいかも
頼れる人もいないしねぇ
自由なのは非リアのメリットよね笑
あらあなた学生だったの?
高校生かしら?
制服じゃないと随分大人っぽく見えるわねぇ
テストが近いのに勉強してない?
あら、それは大変だわ
でも自分を信じることが出来たらテストが辛いっていう気持ちも少しはなくなるんじゃない?
まぁあたしは勉強苦手だったんだけど笑笑
そろそろお開きにしましょうか
こんなアラサーの話に付き合ってくれてありがとね
坊ちゃん、いいことあるといいわね
天体観測をしようと言って
夜、人気のない山の方へ向かった
山に近づくにつれて
闇に浮き出た星が増えていく
駐車場に車を停めて
そこから夜空を眺めた
綺麗な星空だった
月は見当たらなかった
今日僕は彼女に告白しようと思っている
「好きです、付き合ってください」
『ごめんなさい...私付き合ってる人いるんだ』
あっけなく振られてしまった
薄々振られるのではないかと思ってはいたから
残念なことに心の準備はできていた
「そっか...」
そう言って僕たちは帰路についた
闇と同化したと言っても信じられるくらい静かだった
家に帰ったらベランダから月が見えた
ゆらゆらと形を留めていない月を見て
「月が綺麗だな」なんてぼやいた