君のことは好きなんだ
友達だから
だけどほんの少しだけイラッとしてしまう
友達の呼び名を覚えてくれてなくて
話が通じなかったり
話の途中で友達に話しかけに行ったり
口が軽くて何でもかんでも言ってしまったり...
君の嫌いなところなんていくらでもあげられる
でもそれと同じくらい好きなところもあげられる
こんな関係を友達と呼ぶのだろうなと思ったけど
その言動は改めてほしい
長かったテスト期間が終わり
テストの結果が返ってきた
赤点は回避したもののあまり良い結果ではなかった
平均よりは少し高い位の点数だった
でも大学進学をするためには
もう少し取らないといけない
なんだか心が折れてしまいそうで
泣きそうになりながら帰っていたら
突然雨が降ってきた
テストの点数に加えて雨が降ってくるなんて...
色々と心に溜まっていて限界だったのかもしれない
傘もささずに泣きながら歩いた
どうせ泣いてることなんてバレないし
バレても見なかったフリをする人が大半だろうから
学校から家までは少し距離があるから
1人でたくさん泣いた
頬につたった涙がかれてきた頃
ふと空を見ると雲の隙間から
綺麗な夕焼けが覗いていた
全神経を手元に集結させて
1ミリの狂いもないように手をそっと動かす
プチンと細い糸が切れた
ふぅー
大きく息を吐く
布のギリギリに縫われたタグを切るこの瞬間が
とてもドキドキして楽しい
届かないのはわかりきっているけど
素敵な人との出会いを求めて
自分の身長よりも高い位置にある本を取ろうとする
幼なじみにはバカにされているが
今のところ3人くらいは引っかかっている
全員好みのタイプじゃなかったから何もなかったけど
でも素敵な人を諦められないから
今日も手を伸ばしていた
『はいこれ 取りたかったんだろ?』
聞き覚えのある声がして私の取ろうとした本が
手元にやってきた
『俺じゃダメなの?』
漫画みたいなセリフを言っているが
生憎私のタイプではない
普通ならここでドキドキするんだろうが
私の心臓は一定の拍で仕事を全うしていた
「ごめん無理」
そう言って書店を後にした
明日から別の方法で探すしかないな
パリン
大きな音を立ててマグカップが割れた
大切な人からもらった大切なマグカップだった
私の好きなアーティストとコラボしていて
とても気に入っていたのに
父親に割られるなんて
いつも仕事優先で私や母のことを
気にしたこともなさそうなのに
たいして話したこともないのに
父の日とか誕生日とか関係なく
感謝を伝えたことも
お祝いしたこともなかった
そんなどうでもいいとさえ思う人に
とても大切なものを壊された
私は怒りが抑えられなかった
父親と同じことをすることになるのはわかっていたが
止められなかった
バリン
先程よりも大きな音を立てて皿が割れた
母と父の名前が入っている皿だ
その皿が粉々になったのを見て父は涙を流した
私は泣いていないのになんで泣くの?
最初に割ったのはそっちだよね
破片を抱きしめて泣く父を見下ろして
怒りを我慢したが何故か涙は流れなかった