もう...たくさんだ
こんな場所にいたくない
自分がいてもいなくてもたいして変わらないのなら
ここから飛び降りてしまいたい
強風が吹き抜ける屋上で
涙も流さずに1人でたたずんでいた
フェンスを乗り越え
片足を前に出そうとした時
「何してるんだ!!危ないだろ!!」
と誰かが頭の割れそうな大きな声で叫んだ
その声の人物を振り返ると
顔面蒼白というレベルで血色が悪い人に
飛び降りるのを止められたらしい
ということがわかった
彼になら言えるのかもしれない
ほんの僅かな希望を抱いて
フェンス越しの君に話しかけた
自分の進路をそろそろ決めないと行けない
進路希望は真っ白だ
日が傾き始めていて教室は紅く染まっていた
ふと窓の外を見ると
1羽の渡り鳥が飛んでいた
たった1羽だけで飛ぶ様子は
クラスの中で唯一進路が決まっていない
私みたいだった
誰も私の事を知らない所へ行きたい
翼をかしてなんて言わないから
1枚の羽と勇気を私にわけて欲しい
なんて思ったけれど
特別やりたいことなんてないから
私は窓の外の風景をカーテンで遮断した
さらさら
効果音をつけるとしたらこうだろうか
苦しい訳でも辛いわけでもないのに
気力や意力や感情が心から外へ流れていく
ただ無になっていく
友達に話しかけられても「へぇ」としか思えなくなる
友達の話は面白いし友達のことは大好きだけど
心が仕事をしなくなった私は
無に近い感情のまま静かに息をしている
君のことが嫌いになったわけじゃないんだ
どうか誤解しないでほしい
たまにこうなってしまう私でもいいのなら
さらさらと流されないような「友達」という分類に
私を留めておいてほしい
これが終わったら
これを完成させたら
数日ぶりに睡眠をとることができる
この業界で生きてきてはや10数年
最初は『期待の新人』と言う名目で注目されていたが
最近では話題作も作れない元期待の新人
と呼ばれているらしい
おまけに今年度から小説家になったのに
もう既に話題作を作ってしまった新人がいる
肩身が狭い...
「天才」と呼ばれたかった
何の取り柄もない自分でもできると証明したかった
ただひたすらに小説を書き続けるしかないのだと
それでもなお新人には劣ると
痛いほど現実が自分に刺さってくる
泣きたくてもなく資格なんてないから
泣いたってどうしようもないから
原稿の最後に句点をつけて布団に横たわった
わたしは人と話すことが苦手だから
話しかけれないし話せても会話が続かない
そんな私にも毎朝声をかけてくれたことが
とても嬉しかった
今日は君の誕生日だから名前を呼んでお祝いしたい