2/1/2026, 12:45:43 PM
〚ブランコ〛
夜の公園で私はブランコに座り、
足先で砂をかすかに蹴った。
チェーンが鳴る微かな金属音が、心の揺らぎと音叉のように共鳴している。
年上の部下を持つことは、特別なことではない。
理屈では分かっている。
役割が違うだけ、線引きは明確、
尊重と対話。
でも、人一倍気にしてしまう性格は、今日も静かに自分を消耗させた。
ふ、と溜息が漏れる。
仕事は楽しい、仲間も素敵だ。
笑い方が好きだなと思う人がいる。
背中を預けられる人もいる。
だからこそ、些細な言い回しや顔色に自分の未熟さを見つけて、
胸の奥に小さな棘を増やしてしまう。
「相席いい?」
耳に落ちた声に、はっと顔を上げた。
そこにいたのは、いつも通りの優しく微笑む彼だった。
彼は私の返事を待たず、隣のブランコに腰をかけた。
「寒いね」
「うん」
それだけで十分だった。
彼は自分のリズムで、ゆら、ゆら、と揺れる。
私はその揺れを横目で追いかけ、
気づいたら口元が緩んでいた。
頬の裏側がほどけ、胸の棘がひとつ、砂の上に落ちる気がした。
私は小さく息を吸い込み、空を見る。
星はまばらだ。
私はもう一度、鎖を握り直す。
冷たさは、さっきほど鋭くない。
2人を包み込む空気は優しく、
温もりに満ちていた。