君からのLINEを見た瞬間、私はベッドの上から跳ね上がる。
なんだっていい。「今暇?」だけでもいい。
君は気づいていないかもしれないけれど、君からの言葉を受け取るだけで私は天へと昇る感覚だ。
まだ早いかな。そろそろかな。というタイミングで私はLINEを返す。
「何?わたし忙しいんだけど^^;」
本当は全然暇だけど。私は重い女だから、好意があると思われないように。
そしてまた既読とメッセージの間をドギマギしながら見守るのだ。
この命、燃え尽きるまで生きよう。
たとえそれが何も生み出さなかったとしても、無駄な死なんてひとつもないのだから。
早く起きすぎてしまった時の、夜明け前の薄明かりが好きだ。
日中とは違う冷え切った空気が、人のいない街路を抜けている。
澄み切った風の心地よさと、まだ眠気の覚めない視界とが混ざり合って、まるで日々の慌ただしい空気から抜け出したような感覚を覚える。
そしてまた眠り、微睡の中へと誘われていくのだ。
本気の恋?
まあそんな言葉、よく言えますわね。
今度は本当にホントだから大丈夫だって?
いや、その言葉何回目よ。
はぁ、まあ、あなたのその恋多き所は見てて飽きないけども、失恋するたびに死ぬほど落ち込むのはおやめなさいね。あなた慰めるのはいつも私なんだから。
私の気になってちょうだいよ。
ま、そこまでいうなら頑張んなさいな。
私はいつも見てるからね。
「え、もうカレンダー貰えないんですか?」
驚く私の目の前に立っている新聞屋さんが申し訳なさそうな顔をした。
「ええ、こちらも不況でね……経費削減と相成りまして」
「そうですか……」
私は頷きながらも、少し残念な気持ちになった。
いつも実家の今のコルクボードには、新聞屋のカレンダーを飾ってたからだ。
シンプルかつかなり書き込めるようになっているそのカレンダーは、いつの間にか実家の象徴となっていた。
そりゃ最近は子供も独り立ちしていき、世間はスマホ主体のスケジュール管理になって書くことが減っていっていたが、無くなったらなったで、私はスコンと穴が空いたように寂しくなっていった。
「じゃあ買わなきゃな……あーあ、せっかくだし、可愛いの買おうかな」
私はため息をつき、文具屋へと出掛けていった。
……その先で推し(万年筆)に出会うのだが、これはまた別のお話。