コウ

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「え、もうカレンダー貰えないんですか?」
驚く私の目の前に立っている新聞屋さんが申し訳なさそうな顔をした。
「ええ、こちらも不況でね……経費削減と相成りまして」
「そうですか……」
私は頷きながらも、少し残念な気持ちになった。
いつも実家の今のコルクボードには、新聞屋のカレンダーを飾ってたからだ。
シンプルかつかなり書き込めるようになっているそのカレンダーは、いつの間にか実家の象徴となっていた。
そりゃ最近は子供も独り立ちしていき、世間はスマホ主体のスケジュール管理になって書くことが減っていっていたが、無くなったらなったで、私はスコンと穴が空いたように寂しくなっていった。
「じゃあ買わなきゃな……あーあ、せっかくだし、可愛いの買おうかな」
私はため息をつき、文具屋へと出掛けていった。
……その先で推し(万年筆)に出会うのだが、これはまた別のお話。

9/12/2023, 3:24:15 AM