1K、ユニットバス付きのこのマンションの一室が私の根城。
人を呼ぶには少し狭いけど、この空間の中だけは何をやっても自由なんだ。
夜にポテチ食べてもいいし、友達と長電話と夜更かししても良い。
どこへ出かけるにも自由だし、門限も伝えなくていい。ああなんて素晴らしいんだ!
……というのを、今の私が書いてるって思うとなんだかおかしくなっちゃうな。
今の私は結婚して、自由な一人暮らしとはサヨナラしてる。
たまーにこの時もよかったな、って思う時もあるけど、今の生活を離れる気も、ないかな。
恋多き女だからさ、失恋とかしょっちゅうなのよ。
こないだ一目惚れしたカフェの店員さんだってさ、こないだ指輪してるの見ちゃったしさ。
追っかけてた推しもスキャンダル真っ盛りだしさ、もう私の心はボロボロなわけ。
はあぁ、もう新しい推し見つけんとやってられんわー。
え?あんた?
あんたはただの旦那だし、スーパーウルトラ完璧な私の推したちと一緒にしないでちょうだいよ!
家のリビングで、妻がそう嘆いていた。
妻の恋愛事情は、相変わらずよくわからない。
正直と捻くれ者
この属性は反対のようで本質は同じように見える。
正直に生きれば生きていたいけど、本音を隠さないといけない場面もある。
もちろん、どれが正解かはわからないけどね。
湿気なのか気圧なのか、息が詰まる感覚が取れない。
まるで水中の中にいるように呼吸がしづらく、たくさんの錘を服につけているように身体が重い。
昔はそんな風に考えていなかったけど、今ならこれは気圧の影響だということはわかる。
だるく、重くて陰鬱。これが今の私が思う梅雨の印象だ。
あー、仕事帰りたいなぁ。
「明日は雨が降るかなあ」
そんな風に言う彼女を見て僕は「天気なんてどうだっていいじゃないか、そんなこと」と言った。
本当に明日の天気はどうでもいい。何せ、僕が転勤してから彼女とは一年も音沙汰が無かったのだ。
遠距離恋愛は成就の可能性が低いからやめろとは言われていたけど、まさか自分がそうなるとは当時は露ほども思ってもなかった。
「なんで連絡してくれなかったんだ」
理由はもうわかりきっているのに、そう言葉を紡ぐ自分が情けない。
「でも最近暑くてたまらないから、ラッキーかな」
しかし、彼女は変わらず天気の話をしている。
きっと彼女も、あの言葉を言うのを惜しんでいるのだろう。
雨でも雪でもなんでもいい、泳がせないでくれ。
恋の終わり、明日は雨。