「私ね、遠くの街へ行くんだ」
いつもと同じに思えた帰り道。
あなたがふとこぼしたその言葉が
信じられなくて、信じたくなくて。
少しの間の後、僕は聞き返した。
ただの聞き間違い、もしくは
冗談であることを願って。
「明日、遠くの街へ行く」
幼子をなだめるような、優しい声。
さっきよりもゆっくりと、はっきりと。
向けられたあなたの笑顔は
痛いほどに優しくて、かなしかった。
「私ね、やりたいことがあるの」
知ってるよ。知らないわけない。
ずっと、あなたを見ていたんだ。
「いつか、会いに来るよ。お互いやりたいことやれたらさ」
無理だよ。
だってあなたがいなきゃ
僕はなんにもできないんだよ。
あなたがいないと、僕は
やりたいことなんか、なんにもない。
「私がいなくても、もう大丈夫だよ」
あなたにはわかんないよ。
大丈夫じゃないよ。
あなただけが、光なんだ。
「私はあんたの神様でも太陽でもない。そして、あんたは月じゃない。やりたいこと、やれるよ」
僕のやりたいことって、なんだよ。
「やりたいこと見つかったら、手紙出してよ」
その言葉に、僕は頷いた。
あの日から2年と数ヶ月。
僕は遠くの街へ手紙を出した。
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「遠くの街へ」2023. 2. 28
ほら、おいで? オヤスミナサイ!
難しいコトバ 苦いキオクは
たのしいオモチャ あまいオカシに!
ねぇ、ほら シアワセでしょう?
マシュマロみたい ワタシだけのセカイ
ココには コワイものなんて ないわ!
イタイ コワイ セカイなんて
もうやめて ココには イラナイノ!
すべて すべて わすれてしまおう!
ほら、はやく お茶会におくれちゃう!
ああ ホントウに ステキでしょう?
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「現実逃避」2023. 2. 27
静かな夜は、空を見上げる。
夜も明るいこの街では、星は見えない。
この街の一番の暗がりは人間関係ね。
そこでも星なんて見えやしないけど。
そう呟いたら、君はなんて言ったっけ。
あの日この街を飛び出した君を
優しく輝く君の声を
眩しい君の笑顔を
私はもう、思い出せやしないわ。
大好きだった。
君のこと、大好きだった。
君は今、何をしてるの
そんなこと考えてやらないわ。
でも
君は今、輝く笑顔を
星に向けていられているかしら。
そうあって欲しいの、心から。
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「君は今」2023. 2. 26
青空を隠す雲を見て考える。
君が青空みたいに笑っていた時は
いつだって僕の心までも青空だった。
物憂げな空に浮かぶたくさんの雲は、
君という青空を隠してしまった。
物憂げな空を見ると思い出す。
あの時瞬く間に曇った
青空みたいな君の笑顔を思い出す。
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「物憂げな空」2023. 2. 25
「ねぇねぇ」
鈴の音みたいな声が響く。
『なに?』
っていつも通りに返せば、
「らぶゆー!」
ああ、文字に起こせって言われたら間違いなくひらがなで書くだろうな…
なんて、直接言ったらとても怒られそうだから黙っておこう。
そんな可愛い君に、僕の精一杯で、こう返してやるんだ。
『Love you』
そしたら君は、少しの間ぽかんとして
「なにそれずるい!発音良すぎでしょ意味わかんない!なんなの!?なんか負けた気分!腹立つー!!!」
って僕に飛びついてくる。
そして軽く言い合いをして、笑い合う。
こんないつもの時間を、愛している。
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「Love you」2023. 2. 23