布団に潜り込んで一緒に寝ようとする犬
炬燵の中でぬくぬくとヘソ天で寝る犬
膝の上でうとうとしている犬

『ぬくもりの記憶』

自業自得なのはわかっているんだけど
確実に冷えることも予想できていたけれど
「こんなことしても寒いだけなんだよなぁ」って、頭の片隅では警告していたけれど

新雪を見るたび、素手を突っ込んで一握りぶんを持ち上げる遊びがやめられない
わかっているのに、冷たいのに、でもやっぱり自分の身体で雪を実感したくなる

『凍える指先』

一面の銀世界に、ぽつんと少しだけ歪な小山

私と兄の二人で必死に築き上げた雪の山だ

「斜面を造ってソリで滑ろう」という提案がなんとも魅力的だったのだ

最初の乗り手はもちろん兄

私は安全性が確保されてからだと言いくるめられ、おとなしく待っていた

頬を期待で赤く染めた兄が、勢いよくソリを押し出す

そして勢い衰えぬまま…！

「おかーさーん！　お兄ちゃん飛んでっちゃった！」

コース外の、田んぼの外まで飛んでいった

『雪原の先へ』

南極だか北極だか、どちらの話だったか…。それとも両方だったか…。
とにかく、とてもとても寒いところで吐く息は白くならないらしい。
なんでも、空気が綺麗でゴミが混じっていないからだそうな。
我々が普段吐く息が白いのは、空気が汚れている証拠なんだとか。

…そんな話を学生時代に聞いたけれど、はたしてあれは真実なのか嘘なのか…。

『白い吐息』

眠れない夜のスタンドライト

きっと私と同じように眠れない人がいるだろう

そんな人にも届くように

手元だけを照らす灯りは消さないでおく

『消えない灯り』