空から女の子が降ってきた。
自由落下してきたので優しくキャッチするなんてできるはずもなく、俺は見事に押しつぶされた。セクハラだなんて言うなよ、ちくしょう。
彼女は見たところ高校生くらいで、若いのに大変だなぁと感じてしまう。まあ、俺が言えたことでは無いが。どうしてここに来たのかと聞いてみれば、階段から落ちたんだと言う。なんともそそっかしい理由だ。俺が何も言えないでいると、彼女はのこしてきた母親が心配だと泣きだしてしまった。
勘弁してくれ、こちとら十数年前に子供をあやしたきりなんだ。わたわたとハンカチをとりだし、彼女に差しだす。あ、鼻水拭いた。まあいいけど。
ふと彼女が俺のハンカチを見て何事かを呟いた。
「あれ、これ…」
突然、ぐるり!と彼女が回転する。そうしてそのまま空に落ちていった。
あまりにも急なことだったので、湿ったハンカチが頭に落ちてきてようやく我に返った。来るときもそそっかしければ、かえるときもそそっかしいのか。まったく誰に似たんだか。
「…ま、母さんによろしく。」
『また明日!』
こんな話を知ってるか?明日というのは永遠に来ないらしい。明日を夢みて床についても、目を開ければ待っていたのは「今日」でしかないんだよ。明日はまた先に行ってしまう。「昨日」からしてみれば今日は「明日」かもしれないが、僕たちは過去には戻れないわけだからやっぱり「今日」は「今日」でしかない。結局「明日」なんて僕たちの妄想に過ぎなくって、実際は「今日」がずっと続くだけなんだろうな。まあ、つまり何を言いたいかと言うと
「また明日。」
あの、私のこと愛してますか?
随分と急ですね。もちろん愛してますよ。
ではそこから飛び降りれますか?
ここ5階ですから無理ですね。あと4階分は低くしてください。
では私のためにノーベル賞を取ってくれますか?
私の頭では無理ですね。あと私文系ですし。
文系でもとれますよ?
文学賞でしょう。残念ながら私に文才はないので無理ですね。
では私と駆け落ちしてくれますか?
うーん無理ですね。私にも親がいますし、未成年の私たちではすぐ捕まるのがオチでしょう。
では、私のためにお菓子をたくさん買ってきてくれますか?
あなたが虫歯になってしまうので無理ですね。
もう、私を愛しているんでしょう?あなたの愛は何ができるんですか?
そうですね。あなたを愛することでしょうか。
はぐらかさないでください。
とんでもない!私はあなたを愛しています。だからここには劇場のチケットがあります。
え、それって今話題の舞台の?
行きたがってたでしょう?
…最初からそれを出せばいいんですよ。
素直じゃないのはお互い様です。
…ぐぬ。
さ、帰りましょうか。
『愛があれば何でもできる?』
子供のままでいたい
実際、私は子供なのだ
それなのに背中の荷物はどんどん増えていく
私は子供のままなのに周りは大人になっていく
それだから大人の皮を被ってみた
いまだごわごわしていて馴染まない
だが、脱いでしまうわけにもいかない
いつか馴染んで、境目も見えなくなるのだろうか
いつか、真っ直ぐ立てるだろうか
子供のままでいたい、そう思わなくなるのだろうか
なんとなく、それは嫌な気がした
『子供のままで』
あっ流れた!
ええっ!
はは、君ってほんとにタイミング悪いねぇ。
くそ、これで3度目だ。流れ星はどれだけ僕に見られたくないんだ?
私としてはこんなときにホットミルクを用意しに行く君に驚きだよ。もしかしてわざとやってる?
そんな訳ないだろう。今日は冷えるし、長丁場になるだろうからね。ほら、君の分だ。
お、ありがとう。はぁ、あったまるなぁ。
そうだな。
流れ星に何願う?
んー。卵が安くなりますようにとか。
うわー夢がない。これだからリアリストは。
リアリストってそう意味じゃないだろう。そういう君はどうなんだ?
あーそうだな。ずっと君といられますようにとか?
キショ。
ひっど!
好感度稼ぎが露骨なんだよ。あとキメ顔がうざい。
本心なのになあ。
どうせなら叶うかわからないことを願えよ。
うーん。なんだろうなぁ。
なんだろうなぁ。
……あっ流れた。
『流れ星に願いを』