残念ながら、私は恋をしたことがない。それに従って失恋をしたこともない。
このお題について語れることはあまりないけれど、もし自分が誰かに恋をして、そして失恋すると想像を巡らせてみる。
私の好みはどんな人だろう?見た目、性格、話し方、服のセンス、装飾品を身につけるかどうか、色々と考えてみる。
一度好きになった相手を自分から嫌いになることは無いだろう。これは、私の家系的にも確実に言えることだ。私の兄は高校から付き合っている彼女と今も一緒にいる。例えば兄が浮気なんかしたら家族総出で兄をぶん殴り彼女の実家へ引きずってでも土下座させに行くだろう。
考えが古臭いと言われるかもしれないが、そもそも私の家族は特別絆が強い。父親は未だに母親を口説くし、私の兄弟も全員社会人でありながら月1で一緒に食事に行くほど仲がいい。
だから、一度でも家族に近い関係になった相手を嫌うことはまずないだろう。
別れたあとに引きずるのは確実に自分だ。何が何でも繋がりを切らないようにするだろう。恋人でなくとも友達としてでも、関係を保とうとすると思う。
こうしてみると、ストーカー気質だとか重いだとか言われるかもしれない。
失恋したとして絶対にそこで関係を終わらせることは無いだろう。きっと、会っていなくても毎年誕生日プレゼントを贈るだろうしお金が必要と言われればいくらでも出すだろう。
そういえば、昔に弟に言われたことがある。
「お前は貢ぎ癖があるからそういうお店には行かないほうがいい」と。
なるほど、流石は一番近くにいただけあって的を得ている。
自分ではあまり意識していなかったけれど、確かに愛する人に求められれば何でも差し出してしまうかもしれない。というか、それが当たり前だと思っていた。
長々と話しているけれど、書いていて一つ気づいたことがある。
私はまだ恋を経験していなくて良かったということだ。
なんなら、失恋していたら私の人生はその人によってめちゃくちゃに破壊されていただろうから。
今の私は自分の人生を幸福にするので手一杯だ。
薔薇にはトゲがあるように、美しいものには毒があるという。
輝かしい功績の裏には血の跡があることを誰も知らない。
飾りの裏をわざわざ見ようとする人はいない。
あなたの努力は、あなたの苦労は、あなたの人生は、人の目にはつかない。
美しいあなたしか人々は知らない。強いあなたしか人々は見ていない。もしかしたら、見てすらいないかもね。
美しいあなたの裏には、一体どんな醜い真実があるのでしょうね?
この世界では、あなただけが真実だ。
あなたがこの世界で最も輝く宝石なんです。
脆くて弱くて醜いあなたは、誰も見てないところでしか泣けない。
真綿で包まれて優しく丁寧に扱われる、なんておとぎ話みたいなことは起きない。
あなたは、傷つけられ、さげすまれ、捨てられる。
けれど、何があっても世界で最もあなたが美しい宝石であることに変わりはない。
あなたの目は真実を見るためにある。あなたの手は真実を知るためにある。あなたの心は誰からも笑われるようなことがあってはならない。
あなたの苦しみはいずれあなたの盾となる。あなたの涙はいつかあなたを輝かせる光となる。
強く美しく気高きあなたへ
私はあなたの弱さを知ってる。あなたの脆さも涙も傷も醜さも知ってる。
それでもなお、私はあなたを美しいと思う。
あなたが自ら輝ける場所を見つけられることを心から願ってる。
正直に話すと、これらは私が誰かに言われたかったことだ。結局、誰にも言ってもらえることはなかった。
だから、あなたに言うね。
私の言葉を必要としているあなたに。
夏が近づいてきた。だんだんと汗ばむ日が増えて会社の冷房も稼働するようになった。
6月の始まり。
じめじめとした雨が降る日も増えた。傘が必須の時期だ。お気に入りの傘と予備の折りたたみの傘、すぐにどこかに忘れてしまうからいつも2本持ち歩いている。
雨の日は濡れないように慎重に身を縮めて、靴も汚れないように水たまりを避けて歩く。
大人になってからなぜこんなにもきれい好きになってしまったのだろうか。子供の頃は雨の中でもはしゃいで水たまりに飛び込んだりしていた。雨が好きだった。
大雨の土砂降りが特に好きで、家の雨戸が閉められて部屋が薄暗くなる。雨の合唱と暗い部屋の非日常感は子供心にワクワクした。
思春期には学校に行きたくなくて、わざと何時間も雨の中で立ち尽くして風邪をひこうとしたりした。雨は当時の私の涙の代わりにザアザアと遠慮なく頬を濡らしてくれた。
雨を避けるようになったのはいつだったろうか。
会社に入り社会人になってから?それよりも前だろうか?
梅雨になり、雨を見るたびに思う。
洋服や仕事や明日のことなんか考えずに雨の中に飛び込んでずぶ濡れになってしまえたらと。
それができなくなることが大人になったということなのだろうか。
明日も雨の予報だ。じっとりと湿った空気にため息をついた。